日本大百科全書(ニッポニカ) 「美味礼讃」の意味・わかりやすい解説
美味礼讃
びみらいさん
1825年に『味覚の生理学』PHYSIOLOGIE DU GOÛTの原標題で刊行されたフランスの本。著者はブリヤ・サバラン。『超絶的美味学の瞑想(めいそう)』という副題がついているだけでなく、「文学や科学のもろもろの学会の会員たる一教授からパリの美食家にささげられた理論と歴史と日常の問題を含む書」という長い標題が付記されている。コーヒーのいれ方、うまいチョコレートの本式のいれ方、揚げ物のこつ、マグロ入りオムレツの作り方など美味美食について語られているが、いわゆる食通の本でも料理法の本でもない。食味の究極は人類の幸福につながると信じた人間哲学の書である。
[小柳輝一]
『関根秀雄・戸部松実訳『美味礼讃』上下(岩波文庫)』