美味礼讃(読み)びみらいさん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「美味礼讃」の意味・わかりやすい解説

美味礼讃
びみらいさん

1825年に『味覚の生理学』PHYSIOLOGIE DU GOÛTの原標題で刊行されたフランスの本。著者はブリヤ・サバラン。『超絶的美味学の瞑想(めいそう)』という副題がついているだけでなく、「文学や科学のもろもろ学会の会員たる一教授からパリの美食家にささげられた理論と歴史と日常の問題を含む書」という長い標題が付記されている。コーヒーのいれ方、うまいチョコレートの本式のいれ方、揚げ物こつ、マグロ入りオムレツの作り方など美味美食について語られているが、いわゆる食通の本でも料理法の本でもない。食味の究極は人類の幸福につながると信じた人間哲学の書である。

小柳輝一

『関根秀雄・戸部松実訳『美味礼讃』上下(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の美味礼讃の言及

【随園食単】より

…いずれも袁枚自身が口にして美味と賞した料理についての記録である。19世紀フランスのブリヤ・サバランが著した美食の古典とでもいうべき《味覚の生理学》(《美味礼讃》)と東西双璧をなす《随園食単》は,日本においても明治以降,受容され紹介されてきた。とりわけ青木正児によって完訳されたことにより,今日多くの人が手にとり中国の食文化の一端を理解できるようになった。…

【媚薬】より

…自分や相手の性欲や性的快感を増大させるために用いる薬の総称で,催淫薬ともいう。長大な陰茎をよしとしてこれを求める願望と関連した男性性器を大きくする薬や,女性性器を小さくする薬といわれるものも媚薬の中に数えられるのは,それによって性感がいっそう高まると信じられているからである。そのラテン語アフロディシアクムaphrodisiacum(複数形aphrodisiaca)は,ギリシア神話の美と官能の女神アフロディテに由来する近代の学術的造語である。…

【料理書】より

…1826年にはブリヤ・サバランの《味覚の生理学》が刊行された。これは一種の人生哲学を説いたエッセーであるが,美食家の経典ともいうべき反響を呼び,日本でも《美味礼讃》の名で翻訳されている。またM.A.カレーム(1784‐1833)が出て,その天賦の才を発揮し,数多くの料理書を精力的に世に問い,フランス料理の基礎固めをやってのける。…

※「美味礼讃」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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