日本大百科全書(ニッポニカ) 「美国四民乱放記」の意味・わかりやすい解説
美国四民乱放記
みこくしみんらんぼうき
1726年(享保11)11月から翌年正月にかけて起こった美作(みまさか)国(岡山県)山中一揆(さんちゅういっき)の、民衆側にたって書かれた騒動記。成立は、一揆の首謀者徳右衛門(とくえもん)らの処刑後3か月目の6月中旬で、筆者は高田の住人神風軒竹翁(しんぷうけんちくおう)である。竹翁の素性は明らかではないが、10点を超えるこの一揆の騒動記のなかではもっとも内容が整っており、また民衆側にたった記録でもある。書き出しの部分に、一揆の首謀者徳右衛門が天草(あまくさ)四郎の子孫だと記されているのも興味深い。竹翁はどうやら、『平家物語』『太平記』『三河物語』に通じ、天草四郎を敬愛し、由比正雪(ゆいしょうせつ)に同情を寄せる教養人だったらしい。
[横山十四男]
『長光徳和著『解説 美国四民乱放記』(『日本思想大系58 民衆運動の思想』所収・1970・岩波書店)』