内科学 第10版 「肝中心静脈閉塞症」の解説
肝中心静脈閉塞症(肝静脈閉塞症)
VODは肝小葉の中心静脈が閉塞し,肝のうっ血,壊死をきたす疾患で,急激な経過をたどる例では腹痛,肝腫大,腹水,黄疸などが出現し重症例では肝不全から死に至る.慢性経過例では門脈圧亢進症による腹水貯留や食道静脈瘤などを認める. ジャマイカで薬用茶として服用されたセネシオのピロリジジンアルカロイド(pyrrolizidine alkaloid)による細小肝静脈傷害として報告され,近年では種々の抗癌薬や放射線照射,造血幹細胞移植後などでも生じることが明らかになっている.約半数の症例では中心静脈の閉塞を認めるが残りの症例では中心静脈の閉塞は認めないため最近は類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome:SOS)という名称が提唱されている.
病理
病理学的には類洞のうっ血,閉塞,肝細胞壊死などを認める(図9-16-2).中心静脈の非血栓性閉塞は類洞内皮細胞障害の二次変化と考えられる.
臨床症状
腹水貯留による急激な体重増加,肝腫大で発症し黄疸,腹痛などを伴う.造血幹細胞移植後の場合は移植後3週以内に発症することが多い. 予後はさまざまで自然寛解例もあるが一部の症例は数週間のうちに肝不全で死亡する.
治療
薬剤や健康食品などが原因の場合は服用を中止する.腎障害,心不全,呼吸不全や感染症に対する十分な全身管理が重要である.[松井 修・小林 聡]
■文献
門脈血行異常症の診断と治療のガイドライン 厚生労働省特定疾患門脈血行異常症調査研究班平成18年度研究報告書,2007.
Bayraktar UD, et al: Hepatic venous outflow obstruction: Three similar syndromes. World J Gastroenterol, 13: 1912, 2007.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報