日本大百科全書(ニッポニカ) 「SOS」の意味・わかりやすい解説
SOS
えすおーえす
船舶または航空機が重大な危険に陥り、救助を求める際に発する無線電信による遭難通信の信号。無線電話の場合にはメイ・デイMay-Dayを用いる。1906年のベルリン第1回国際無線電信会議まではCQD(Come quick, dangerの略)が用いられていたが、モールス符号として聞き取りにくいことから、この会議でSOS(…―――…)が採用されることになった。理由は、発信も簡単で、受信にあたっても間違いを生じないことである。Save our soul.またはSave our ship.の頭文字というのは俗説である。船舶のSOSに用いられる周波数は、A2電波(振幅変調による電信用電鍵(でんけん)操作電波)とB電波(火花放電による電波)では500キロヘルツ、A1電波(電鍵操作だけで断続伝送ができる電波)では2091キロヘルツである。航空機では、その航空機に指定された周波数か、または500キロヘルツを用いることになっている。SOSは船舶、航空機の通信中で最優先の順位を与えられている。ある船舶または航空機からSOSが発せられたことが確認されると、他の船や航空機は、遭難船(または機)との通信以外には同一周波数の使用が禁じられ、救助のために最善の措置を講じなければならない。
長期間使用されたSOSは、新しい救難通信システムのGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System、全世界的海上安全制度)の普及に伴い、日本では1999年(平成11)2月1日以降使用されなくなった。このことは世界海事機関(IMO)の決定によるものであり、日本もGMDSSへの切り換えを行ったが、モールス信号を廃止していない国もある。
[飯島幸人]