キク科キオン(セネシオ)属Senecioの多年草もしくは二年草や一年草の植物。ときに草状の半低木か低木となり,なかには小高木となるものもある。世界中に2000種以上が分布し,耐寒性のあるもの,ないもの,乾燥に強いものなどがあり,日本にも帰化植物を含め13種がみられる。葉は互生するが,根生するものもある。頭花は枝頂に単生するか散房状につく。キオン属は種類も多く,観賞上,鉢花や多肉植物として扱われるものがある。
シロタエギクS.cineraria DC.(英名dusty miller)は地中海沿岸の原産。耐寒性のある多年草で,高さ40~80cmになり,株もとで分枝し,叢生(そうせい)状態となる。葉は羽状でやや肉厚,茎,葉ともに灰白色の綿毛でおおわれ美しい。花は初夏から初秋にかけて咲き,黄もしくはクリーム色。鉢物や花壇材料として扱われる。シネラリアはカナリア諸島の原産で,サイネリア,フウキギク(富貴菊)の名もある。直立する短い茎から心臓状卵形の葉が四方へ互生し,葉は表が緑色で裏が紫紅色。冬から春にかけて頭花をつけ,春の鉢花として知られ,園芸品種が多数ある。
茎や葉あるいは根が多肉化した多肉セネシオは,南アフリカとマダガスカルが分布の中心で,メキシコ,カナリア諸島などにも少数産し,八十数種ある。茎,葉,根と多肉化する部分によって,3群に大別できる。葉が多肉化した種群が最も多く,棒状,紡錘形,球形と多様である。南アフリカ原産のミドリノスズ(グリーン・ネックレス)S.rowleyanum Jacobs.は昭和40年代後半から急速に観葉植物として広がった。葉は径1cmほどの球で,先端がとがり,茎はつる状に1m近くも伸びる。ワックスアイビーS.macroglossus DC.は,南アフリカの原産のつる性の多年草。葉姿はヘデラに似るが,葉は肉厚で蠟質の光沢ある緑色。つり鉢として観賞するが,葉に乳白の斑(ふ)の入る美しいものがある。マダガスカルのシキンショウ(紫金章)S.crassissimus Humbert.は,楕円形で長さ6cmほどの葉が,茎に垂直につく。茎が多肉化した種群は,テツシャクジョウ(鉄錫杖)S.stapeliformis Phillips ssp.minor (S.Moore) Rowleyやシッポウジュ(七宝樹)S.Senecio articulatus (L.F.) Sch.Bip.が代表的。前者は柱サボテン状で,茎に稜があり,葉は痕跡的。頭状花は直径約3cmの緋色の球となり美しい。後者は茎が円柱状で,茎頂から深裂した多肉葉を展開する。いずれも高さは30cmくらい。またアフリカ東部の高山域にはジャイアントセネシオと呼ばれ,茎が木質化し,高さ5mにもなる群が分化している。
観賞するセネシオ類には,一・二年草的取扱いをする鉢花,花壇材料的なものと,多肉植物の二つのタイプがある。前者は冬季3℃以上を保ち,日によく当てて育て,培養土はほかの鉢花と同じものを使う。繁殖はおもに種子によるが,挿芽もできる。後者は冬0℃以上を保つようにする。光線が弱いと間延びするので,室内では明るい場所に置く。川砂を主体とした排水のよい土壌に植え込み,繁殖は挿芽による。
執筆者:坂梨 一郎+湯浅 浩史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…7~8月,茎上部に大型の散房状花序をつけ,多数の黄色い頭花を開く。 キオン属Senecio(英名groundsel,ragwort)は1500種以上を含む大きな属である。日本には十数種の自生植物のほかに,ヨーロッパ原産の帰化植物ノボロギクS.vulgaris L.(イラスト)がある。…
…日本全土に分布する固有種で,山地の沢沿いの林床に生えるキク科の多年草(イラスト)。ボロギクともいう。根出葉は花時にはないが,茎の下部とともに白毛によって覆われる。茎は直立し,高さ40~120cm,深裂した薄い茎葉を互生する。花は6~8月,枝の先にやや散状に多数つく頭花である。頭花は黄色で,筒状花と舌状花からなり,径12mm。総苞は1列,花柄は細く,苞を欠く。瘦果(そうか)は長さ1.5mm,細毛を生じる。…
※「セネシオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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