日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳下垂体ホルモン剤」の意味・わかりやすい解説
脳下垂体ホルモン剤
のうかすいたいほるもんざい
脳下垂体(下垂体)ホルモンを製剤化したもの。脳下垂体は腺(せん)様構造からできている前葉および中葉と、神経組織からできている後葉に分けられる。前葉から分泌される活性物質のうち、次の6種のホルモンが知られている。副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、乳腺刺激ホルモンがそれである。このうち医薬品として製剤化されているのは副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの両方を含む性腺刺激ホルモンで、乳汁の分泌促進のために使用された乳腺刺激ホルモンは現在は市販されていない。副腎皮質刺激ホルモン製剤は天然品から合成品にかわっており、酢酸テトラコサクチド、酢酸テトラコサクチド亜鉛注射液がある。性腺刺激ホルモン剤には血清性、胎盤性、下垂体性の3種がある。成長ホルモン剤は下垂体性低身長症の特効薬であるが、組換えDNA法によってつくることが可能になった。脳下垂体後葉ホルモンにはオキシトシンとバソプレッシンの2種がある。オキシトシンは分娩(ぶんべん)誘発、微弱陣痛に注射で用いられ、バソプレッシンはタンニン酸バソプレッシンとともに注射で尿崩症の治療に用いられる。また、バソプレッシンの類似薬に酢酸デスモプレシンがあり、点鼻液として中枢性尿崩症の治療に用いられている。
[幸保文治]