日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳脊髄血管異常」の意味・わかりやすい解説
脳脊髄血管異常
のうせきずいけっかんいじょう
脳、脊髄の血管に解剖学的あるいは機能的な異常を呈する病態の総称。障害された血管の部位に応じて種々の神経症状が認められる。もっとも頻度の高いのは脳血管障害、すなわち脳卒中である。これには大別して脳梗塞(のうこうそく)と脳出血がある。脳梗塞とは、脳動脈の硬化などのために脳動脈の内腔(ないくう)が狭くなったり閉塞して、血液の供給が途絶ないしは減少し、脳組織が障害された状態をいう。また脳出血とは、脳の血管が破れて血腫(けっしゅ)ができ、脳組織が障害された状態をいう。これと同様の機序で脊髄血管においても脊髄梗塞や脊髄出血が引き起こされる。このような障害が生じると、脳の場合には意識障害や片麻痺(へんまひ)、脊髄の場合には運動麻痺や知覚障害などがみられる。いずれにしても適当な病院で精密検査を受け、治療する必要がある。予防的には、脳卒中の場合は高血圧や脂質異常症などの危険因子を除去するように平素から心がけることがたいせつである。
そのほかの脳脊髄血管異常としては脳動脈瘤(りゅう)や脳動静脈奇形があり、それらを基盤として発生するくも膜下出血が知られている。また先天的あるいは若年発症の脳血管異常であるもやもや病や脊髄動静脈奇形などがある。脳脊髄血管異常の発症の仕方、重症度、予後などは、障害部位や障害程度によって異なるため、それぞれの場合に応じた対策を講ずることが必要である。
[木村和文]