もやもや病(読み)モヤモヤビョウ

デジタル大辞泉 「もやもや病」の意味・読み・例文・類語

もやもや‐びょう〔‐ビヤウ〕【もやもや病】

ウィリス動脈輪閉塞症

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精選版 日本国語大辞典 「もやもや病」の意味・読み・例文・類語

もやもや‐びょう‥ビャウ【もやもや病】

  1. 〘 名詞 〙 急性片麻痺や、蜘蛛膜下出血などでウィリス動脈輪大脳動脈輪)に発症する血管の閉塞症。若年者にやや多くみられる。脳血管撮影で、もやもやした異常血管網がみられることからこの名がついた。

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EBM 正しい治療がわかる本 「もやもや病」の解説

もやもや病

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 ウイリス動脈輪閉塞症(どうみゃくりんへいそくしょう)ともいいます。頸動脈(けいどうみゃく)が頭蓋内(とうがいない)に入った最初の部分の左右両側に、狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)がみられる脳血管障害の一種です。脳深部の血流不足を解消するため、無数の網目状の異常血管が新しくつくられます。脳血管撮影をすると、異常な血管がもやもやと映ることから、この名前がつけられました。
 子どもの場合は、大声で泣いたり、熱い食べ物に息を吹きかけたりして、過呼吸になったときに、言語障害や手足に力が入らない脱力発作けいれん、視力障害、頭痛、意識障害などがおきます。成人の場合は、脳内出血をおこして片麻痺(かたまひ)や意識障害がみられます。また、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)をおこすこともあります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 原因不明の病気で、厚生労働省の指定難病に選定されています。子どもの発症は、脳の血液量が足りなくなっておこる脳虚血発作(のうきょけつほっさ)の一つです。発作をくり返すうちに運動障害、言語障害、知能障害などの後遺症が残ることがあります。成人の場合は、突然の頭痛、嘔吐(おうと)に襲われ、脳内出血、くも膜下出血をおこします。

●病気の特徴
 日本人に多い病気で、日本で発見されました。欧米ではほとんどみられません。10歳以下にピークがある小児発症例と、30歳代にピークがある成人発症例があります。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

■出血した場合
[治療とケア]開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] もやもや病の患者さんに対して、大脳の血腫を取り除く開頭血腫除去術を行った場合、手術の有効性が手術による有害性を上回るという確定的な結果を示した臨床研究は、現在までのところありません。開頭血腫除去術は、救命あるいは脳機能障害を軽減することを目的として行われます。(1)(2)

[治療とケア]直接血行再建術を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 出血型もやもや病の患者さんに対して、直接血行再建術を行うことは、内科的治療のみよりも、その後のすべての合併症や再出血を減らすことが、質の高い研究で示されています。しかし、差はわずかなこともありメリットとデメリットを考えて選択するべきでしょう。(3)

■出血のない虚血発作の場合
[治療とケア]抗血小板薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 脳虚血発作に対する対症療法として、血液を固まりにくくする抗血小板薬が用いられますが、その効果を明確に示した臨床研究は見あたりません。専門家が経験的に用いています。(1)
[治療とケア]脳硬膜血管接着術(EDAS)を行う(子どもの場合)
[評価]☆☆
[治療とケア]脳筋肉接着術(EMS)を行う(子どもの場合)
[評価]☆☆
[治療とケア]直接血行再建術を行う(成人の場合)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 脳の血液の流れが悪くなっている虚血部分の血流を確保し、虚血発作を予防するために、外科手術が行われます。成人の場合よく行われている手術が、浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)・中大脳動脈吻合術(ちゅうだいのうどうみゃくふんごうじゅつ)(STA-MCA吻合術)を代表とする直接血行再建術、子どもの場合は、頭皮にある動脈を硬膜に接着させる脳硬膜血管接着術(EDAS)などの間接血行再建術も有効であると報告されています。(2)


よく使われている薬をEBMでチェック

抗血小板薬
[薬名]バファリンアスピリン・ダイアルミネート配合剤)
[評価]☆☆
[薬名]パナルジン(チクロピジン塩酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 動脈硬化性疾患としての脳梗塞や脳血栓を予防する効果があることは信頼性の高い臨床研究で確認されていますが、もやもや病を対象としたものではありません。

カルシウム拮抗薬(きっこうやく)
[薬名]ペルジピンLA(塩酸ニカルジピン徐放剤(じょほうざい))(4)
[評価]☆☆☆
[薬名]アダラートL(ニフェジピン徐放剤)
[評価]☆☆
[評価のポイント] いずれの薬も脳虚血発作を予防する目的で用いられます。塩酸ニカルジピン徐放剤の効果については臨床研究によって報告されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
急性期に出血した場合は手術で血腫を除去する
 もやもや病では、現在までのところ、信頼性の高い臨床研究によって明確に有効性が示された治療はほとんどありません。しかし、脳内出血をおこした場合は、手術で開頭して血腫を除去することが妥当といえます。これは救命ないし脳機能障害を最小限に抑えるためで、現在の医学知識に基づくならば、当然の治療と考えられます。

出血がないときは抗血小板薬などで虚血発作を予防する
 脳内の出血はないものの、血流量が低下したために虚血発作をおこすことがあります。この虚血発作を予防する目的で用いられているのが、抗血小板薬や血管拡張薬カルシウム拮抗薬などです。これらの薬の有効性についてはいまのところ、信頼性の高い臨床研究は見あたりません。

症状安定期に血行再建術を行う
 子どもでも成人でも、必要に応じて手術が実施されます。直接と間接の血行再建術があり、それを組み合わせる方法もあります。出血型もやもや病の患者さんに対し、直接血行再建術が内科的治療と比べて再出血を予防することは、日本の質の高いランダム化比較試験によって示されています。これらの血行再建術は、血流豊富な組織を脳表面に接着させることで新しい血管がつくられるのを促し、それによって脳内の足りない血流を補おうとするものです。
 いずれの手術を選択する場合にも、脳外科専門医の経験や技量が重要な決定要因となります。手術を受けるかどうか、どの手術を受けるかについては、十分な説明を受けたうえで最終判断をする必要があります。

(1)もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究班. もやもや病. 難病情報センター. http://www.nanbyou.or.jp/entry/209 情報更新日 2015年2月20日
(2)ウイリス動脈輪閉塞症における病態・治療に関する研究班. もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン. 脳卒中の外科. 2009; 37: 321-337.
(3)Miyamoto S, Yoshimoto T, Hashimoto N, Okada Y, Tsuji I, Tominaga T, Nakagawara J, Takahashi JC; JAM Trial Investigators. Effects of extracranial-intracranial bypass for patients with hemorrhagic moyamoya disease: results of the Japan Adult Moyamoya Trial. Stroke. 2014 May;45(5):1415-1421.
(4)Hosain SA, Hughes JT, Forem SL, et al. Use of a calcium channel blocker (nicardipine HCl) in the treatment of childhood moyamoya disease. J Child Neurol. 1994 ;9:378-380.

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六訂版 家庭医学大全科 「もやもや病」の解説

もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
もやもやびょう(ウイリスどうみゃくりんへいそくしょう)
Moyamoya disease (Spontaneous occlusion of the circle of Willis)
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 もともとは、脳血管撮影をすると正常の太い動脈が写らず、毛のように細い多数の異常な血管がもやもやと写ることからついた名前です。

 正常な状態では脳の下面には図14のように太い動脈が互いにつながっていて、動脈の輪をつくっています。これをウイリス動脈輪といいます。この病気の本態は、ウイリス動脈輪がふさがったため、血流を補うために細い動脈が発達し、その細い動脈がもやもやした血管として見えているものです。

 正式にはウイリス動脈輪閉塞症といいます。日本、韓国、中国など東アジアに多くみられます。日本には約5300人の患者さんがいるとされています。

原因は何か

 内頸(ないけい)動脈がふさがる原因はわかっていません。10%に家族内発生があり、遺伝的素因もあると考えられています。

症状の現れ方

 年齢によって、症状が違います。若年型といわれる5歳前後に発症のピークがある型では、走る、泣く、熱い食べ物を吹いてさます、笛を吹くなどの過換気によって、一過性の脱力発作、感覚障害、意識障害、けいれん、頭痛などが起こります。

 成人型といわれる発症のピークが30~40代にある型では、脳実質内出血、脳室内出血、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)などの頭蓋内出血や、脳梗塞(のうこうそく)で発症します。

 小児では、知能障害がみられることもあります。

検査と診断

 脳血管撮影を行いますが、典型的な場合はMRA磁気共鳴(じききょうめい)血管撮影)、MRIだけで診断できます。ウイリス動脈輪とその近くの内頸動脈、前・中大脳動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞と、もやもやした血管がみられれば、本症と診断されます。

治療の方法

 脳血管拡張薬、抗血小板薬を投与する場合があります。小児では、脳の表面に腱膜(けんまく)や筋肉を付着させて血行を促す間接的血行再建術、あるいは浅側頭(せんそくとう)動脈­中大脳動脈吻合術(ふんごうじゅつ)という手術を行うことがあります。

 成人型では手術が有効かどうかはわかっていません。何も治療をしないで経過をみる場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 神経内科、脳神経外科の専門医の診察を受けてください。

関連項目

 脳梗塞一過性脳虚血発作脳出血くも膜下出血てんかん

髙木 繁治



もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
もやもやびょう(ウイリスどうみゃくりんへいそくしょう)
Moyamoya disease (Occlusion of the circle of Willis)
(子どもの病気)

どんな病気か

 5歳前後の小児に多く発症します。頭蓋内の内頸動脈末端部(ないけいどうみゃくまったんぶ)、前大脳動脈・中大脳動脈起始部(きしぶ)にかけて狭窄(きょうさく)あるいは閉塞があるため、側副(そくふく)血行路として基底核(きていかく)部・脳底部に異常血管網(もやもや血管)が発達した脳血管の病気で、日本人に多くみられます。

原因は何か

 原因は不明です。狭窄部位の血管の病理組織学的検査では、血管内膜の肥厚が明らかにされています。

症状の現れ方

 小児期には、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)(TIA)や脳梗塞(のうこうそく)などの脳虚血症状が起こります。脳虚血の部位によって運動麻痺、失語・失認、知覚障害、視力障害などの局所神経症状や頭痛、けいれん発作もみられます。このような症状は、とくに過呼吸を生じる状況で誘発され、激しい啼泣(ていきゅう)や楽器を吹くことなどにより低二酸化炭素血症となり、脳血管の収縮を来し、脳虚血症状が現れます。

 また、慢性的な脳虚血から知能障害を来すこともあり、とくに発症年齢が年少なほどリスクも高くなります。

検査と診断

 頭部CT検査では脳梗塞脳萎縮(のういしゅく)がみられ、頭部MRI検査ではもやもや血管をとらえることができます。また、MRアンギオグラフィは最も有用な検査で、脳血管の狭窄・閉塞像、もやもや血管をとらえて確定診断することができます。脳血管造影検査は、手術に関連して行われます。

 脳波検査では、過呼吸負荷中や負荷後に高振幅徐波(じょは)が現れる所見が特徴的です。しかし、過呼吸負荷の検査中に脳虚血症状が現れることがあり、注意が必要です。

治療の方法

 内科的治療としては、①脳虚血防止のためにカルシウム拮抗薬、②血栓防止のために抗血小板薬(アスピリン)、③抗てんかん薬などが投与されます。

 このような内科的治療によっても脳虚血発作の予防には限界があり、知能や運動機能に重い後遺症を残すこともあるので、その場合は外科的治療を行います。狭窄・閉塞部位に直接手術を行うことができないので、病変部より末梢側への外科的血行再建術が行われています。①直接法(浅側頭(せんそくとう)動脈・中大脳動脈吻合(ふんごう)術など)と、②間接法(脳・硬膜(こうまく)・動脈接着術)があります。

石和 俊

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家庭医学館 「もやもや病」の解説

もやもやびょうういりすどうみゃくりんへいそくしょう【もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症) Cerebrovascular Moyamoya Disease】

[どんな病気か]
 日本人に多い原因不明の脳血管の病気です。脳血管撮影を行なうと、脳底部(のうていぶ)の動脈が細くなっていたり、つまっていたりして、もやもやとした異常な血管網が映ることからこの病名がついています。
 厚労省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))に指定され、治療費は公費から補助されます。
[症状]
 5歳前後で発症する若年型では、突然、手や足に力が入らなくなる脱力発作(だつりょくほっさ)、言語障害、意識障害、けいれんがおこります。
 これは、動脈が細くなっていて、脳に十分な量の血液が流れなくなるためにおこる症状(脳虚血発作(のうきょけつほっさ))です。自然におさまることが多いのですが、くり返し発作をおこしているうちに、脳梗塞(のうこうそく)(「脳梗塞(脳軟化症)」)がおこり、精神や知能の障害、四肢(しし)まひ、言語障害、全盲(ぜんもう)などの後遺症(こういしょう)が残ることがあります。
 30~40歳代を中心に発症する成人型のうち、3分の2は、突然の頭痛、嘔吐(おうと)、意識障害などの脳内出血(のうないしゅっけつ)や脳室内出血(のうしつないしゅっけつ)などの症状で発症します。残り3分の1は、若年型と同様、脳虚血発作の症状で発症します。どちらも、症状の再発をくり返します。
[検査と診断]
 CTやMRI、脳波検査、脳循環測定(のうじゅんかんそくてい)などが行なわれますが、確実に診断するには、脳動脈に造影剤を注入してX線撮影する脳血管撮影や、MRIによる脳血管撮影が必要です。
[治療]
 原因がわからないので、まだ確実な治療法はありません。
 手や足に力が入らないなどの神経脱落症状がなければ、ふつうの生活が送れますが、けいれんをおこす可能性があるときは、長期間の抗けいれん薬の服用が必要です。
 まひ、失語症(しつごしょう)(コラム「失語症とは」)などがおこった場合にはリハビリテーションが行なわれます。
 精神や知能にひどい障害が残った場合には、専門施設への入所も考えなければなりません。
●外科的治療
 頭蓋(ずがい)の外を流れている血液を脳内に導き、脳内を流れる血液の量を増やせば、脳虚血発作や出血を予防できるのではないかという考えから、いろいろな手術が工夫され、行なわれています。

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改訂新版 世界大百科事典 「もやもや病」の意味・わかりやすい解説

もやもや病 (もやもやびょう)
cerebrovascular Moyamoya disease

頭蓋内の内頸動脈終末部から前・中大脳動脈起始部(ウィリス動脈輪)が両側性に閉塞性病変を示し,代償的な側副血行路として脳底部に異常血管網が発達した病気。脳血管撮影上の所見で異常血管網の形態がもやもやとしているところからこの名があり,ウィリス動脈輪閉塞症occlusive disease in circle of Willisとも呼ばれている。異常血管網の成因には先天性説と後天性説があるが,いまだ不明である。脳主幹動脈の閉塞性病変は,病理学的には血管壁内膜の細胞繊維性肥厚によることがわかっている。本症はとくに日本人に多く,15歳以下の若年型とそれ以上の成人型では症状に相違がみられる。若年型では脱力発作,視力障害,言語障害,痙攣(けいれん)などの脳虚血による症状が主であり,成人型では異常血管網からの頭蓋内出血で発見されることが多い。病気の原因が不明なため,治療は対症的に行われるのが普通である。近年,脳虚血に対し手術で直接バイパスを造設し頭蓋内血流を増やす頭蓋外-頭蓋内バイパス術や,間接的血行再建術が行われ,一定の効果を挙げている。本症の死亡率は若年型2.7%,成人型11.1%である。
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百科事典マイペディア 「もやもや病」の意味・わかりやすい解説

もやもや病【もやもやびょう】

ウィリス動脈輪閉塞症,脳底部異常血管網症ともいい,厚生省の難病指定疾患。脳底部の動脈に繊(線)維化を主体にする内膜肥厚が起こって重層化し,脳血管撮影でもやもやした異常な血管網が認められることから,この名がある。15歳以下の小児に発病する若年型と成人型があり,若年型が約半数を占める。内膜肥厚によって,血管内腔狭窄や閉塞が起こり,脳虚血発作が起こる。若年型の場合は,脱力発作,言語障害,意識障害,痙攣(けいれん)など。発作をくりかえすうち,脳梗塞や知能障害,麻痺(まひ)などの後遺症が起こることもある。成人型の多くは脳卒中発作で発症し,少数は若年型と同じく脳虚血発作が起こる。抗痙攣薬,抗凝固薬,脳循環改善薬などによる対症療法が中心で,最近は脳の血流を増やすことによって発作を予防するための手術が試みられるようになってきた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「もやもや病」の意味・わかりやすい解説

モヤモヤ病
もやもやびょう
moya-moya disease

ウィリス動脈輪閉塞(へいそく)症の別名。厚生労働省の特定疾患(難病)の一つ。脳血管造影検査で脳底部にもやもやとした煙のような異常血管網がみられる。脳の動脈が詰まり、それを補う血管が発達したもので、日本人に多い。2003年現在の患者は7700人。小児期では泣いたり笑ったり、めんを食べるなど、過呼吸をするときに脳の虚血発作が始まり、片麻痺(へんまひ)、知覚異常、けいれんや頭痛などがおこる。30、40歳代になると、周囲の動脈瘤(りゅう)が破裂し、脳出血をまねきやすい。脳血流を改善する予防手術が有効。

[田辺 功]

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知恵蔵mini 「もやもや病」の解説

もやもや病

日本で発見・命名された進行性の脳血管閉塞症。別名ウィリス動脈輪閉塞症。頭蓋内の動脈(ウィリス動脈輪)が徐々に閉塞していく結果、その周辺に血流を補うため多数の血管が作られ、この部分が脳血管撮影検査によりもやもやと煙のように見えるためこの名がつけられた。難病情報センターによると、日本人に多発し、発症率は人口10万人に対し年間3~10.5人程度、男女比は1:2.5ほどで、難病に指定されている。遺伝関与が指摘されているが原因は不明で、5~10歳に特に多く発症し、次いで30~40歳に多い。症状は、無症状から継続的頭痛・失神・麻痺まで多様で、子供の場合麻痺や知能低下をきたすこともある。閉塞したウィリス動脈輪を開通させる有効な治療法はなく、不足している血流を補い虚血から来る症状を抑える手術(血行再建術)が広く行われている。

(2016-3-6)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

知恵蔵 「もやもや病」の解説

モヤモヤ病

脳の血流障害が原因の、日本人に多い病気。脳の血管造影で、モヤモヤした煙のような像が見られる。3歳前後と30〜40歳代で起こりやすく、男女比は1:1.8。約10%の患者で家族例があり、多因子遺伝が考えられている。脳底部のウィリス動脈輪の狭窄(きょうさく)や閉塞で、脳の必要血流量が保たれなくなる脳虚血型と、血管が破綻(はたん)する出血型とがある。脳虚血型には過度の運動、大泣きなどの負荷によって手足の脱力、言語・意識障害、けいれんなどを起こす。数分で症状が消失する一過性の発作と症状が持続する脳梗塞(こうそく)型があり、小児では前者が多い。治療は頭蓋の外から中へバイパス血管を形成する外科的治療が発作予防や症状改善に有効。難病にも指定され、母子健康手帳にも掲載されている。

(中村敬 大正大学人間学部人間福祉学科教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「もやもや病」の意味・わかりやすい解説

モヤモヤ病
モヤモヤびょう

「ウィリス動脈輪閉塞症」のページをご覧ください。

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