もやもや病(読み)モヤモヤビョウ

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

もやもや病

1950年代に日本で発見された。脳の太い血管が狭くなったり、詰まったりする。血流量が減って、脳に酸素や栄養が届きにくくなる。不足分を補おうと、細い血管に血液が流れるようになる。これらが画像で、もやもやした煙のように見えることから名付けられた。一時的に、手足の力が抜けたり、しびれが出たりする。ひどくなると脳梗塞脳出血を起こすこともある。国内の患者は約1万人とされる。

(2014-05-27 朝日新聞 朝刊 生活2)

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百科事典マイペディアの解説

もやもや病【もやもやびょう】

ウィリス動脈輪閉塞症,脳底部異常血管網症ともいい,厚生省難病指定疾患。脳底部の動脈に繊(線)維化を主体にする内膜肥厚が起こって重層化し,脳血管撮影でもやもやした異常な血管網が認められることから,この名がある。15歳以下の小児に発病する若年型と成人型があり,若年型が約半数を占める。内膜肥厚によって,血管内腔狭窄や閉塞が起こり,脳虚血発作が起こる。若年型の場合は,脱力発作,言語障害,意識障害,痙攣(けいれん)など。発作をくりかえすうち,脳梗塞や知能障害,麻痺(まひ)などの後遺症が起こることもある。成人型の多くは脳卒中発作で発症し,少数は若年型と同じく脳虚血発作が起こる。抗痙攣薬,抗凝固薬,脳循環改善薬などによる対症療法が中心で,最近は脳の血流を増やすことによって発作を予防するための手術が試みられるようになってきた。

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世界大百科事典 第2版の解説

もやもやびょう【もやもや病 cerebrovascular Moyamoya disease】

頭蓋内の内頸動脈終末部から前・中大脳動脈起始部(ウィリス動脈輪)が両側性に閉塞性病変を示し,代償的な側副血行路として脳底部に異常血管網が発達した病気。脳血管撮影上の所見で異常血管網の形態がもやもやとしているところからこの名があるが,ウィリス動脈輪閉塞症occlusive disease in circle of Willisとも呼ばれている。異常血管網の成因には先天性説と後天性説があるが,いまだ不明である。

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大辞林 第三版の解説

もやもやびょう【もやもや病】

突然の頭痛・嘔吐・意識障害の発作が起こり、頭蓋内出血や脳梗塞の原因となる疾患。小児と三〇~四〇代の成人に多い。 X 線撮影を行うと、脳底部に煙のような異常な血管網が写るのでいう。大脳動脈輪閉塞症。脳底部異常血管網症。

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知恵蔵miniの解説

もやもや病

日本で発見・命名された進行性の脳血管閉塞症。別名ウィリス動脈輪閉塞症。頭蓋内の動脈(ウィリス動脈輪)が徐々に閉塞していく結果、その周辺に血流を補うため多数の血管が作られ、この部分が脳血管撮影検査によりもやもやと煙のように見えるためこの名がつけられた。難病情報センターによると、日本人に多発し、発症率は人口10万人に対し年間3~10.5人程度、男女比は1:2.5ほどで、難病に指定されている。遺伝関与が指摘されているが原因は不明で、5~10歳に特に多く発症し、次いで30~40歳に多い。症状は、無症状から継続的頭痛・失神・麻痺まで多様で、子供の場合麻痺や知能低下をきたすこともある。閉塞したウィリス動脈輪を開通させる有効な治療法はなく、不足している血流を補い虚血から来る症状を抑える手術(血行再建術)が広く行われている。

(2016-3-6)

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精選版 日本国語大辞典の解説

もやもや‐びょう ‥ビャウ【もやもや病】

〘名〙 急性片麻痺や、蜘蛛膜下出血などでウィリス動脈輪(大脳動脈輪)に発症する血管の閉塞症。若年者にやや多くみられる。脳血管撮影で、もやもやした異常血管網がみられることからこの名がついた。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
もやもやびょう(ウイリスどうみゃくりんへいそくしょう)
Moyamoya disease (Occlusion of the circle of Willis)
(子どもの病気)

どんな病気か

 5歳前後の小児に多く発症します。頭蓋内の内頸動脈末端部(ないけいどうみゃくまったんぶ)、前大脳動脈・中大脳動脈起始部(きしぶ)にかけて狭窄(きょうさく)あるいは閉塞があるため、側副(そくふく)血行路として基底核(きていかく)部・脳底部に異常血管網(もやもや血管)が発達した脳血管の病気で、日本人に多くみられます。

原因は何か

 原因は不明です。狭窄部位の血管の病理組織学的検査では、血管内膜の肥厚が明らかにされています。

症状の現れ方

 小児期には、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)(TIA)や脳梗塞(のうこうそく)などの脳虚血症状が起こります。脳虚血の部位によって運動麻痺、失語・失認、知覚障害、視力障害などの局所神経症状や頭痛、けいれん発作もみられます。このような症状は、とくに過呼吸を生じる状況で誘発され、激しい啼泣(ていきゅう)や楽器を吹くことなどにより低二酸化炭素血症となり、脳血管の収縮を来し、脳虚血症状が現れます。

 また、慢性的な脳虚血から知能障害を来すこともあり、とくに発症年齢が年少なほどリスクも高くなります。

検査と診断

 頭部CT検査では脳梗塞脳萎縮(のういしゅく)がみられ、頭部MRI検査ではもやもや血管をとらえることができます。また、MRアンギオグラフィは最も有用な検査で、脳血管の狭窄・閉塞像、もやもや血管をとらえて確定診断することができます。脳血管造影検査は、手術に関連して行われます。

 脳波検査では、過呼吸負荷中や負荷後に高振幅徐波(じょは)が現れる所見が特徴的です。しかし、過呼吸負荷の検査中に脳虚血症状が現れることがあり、注意が必要です。

治療の方法

 内科的治療としては、①脳虚血防止のためにカルシウム拮抗薬、②血栓防止のために抗血小板薬(アスピリン)、③抗てんかん薬などが投与されます。

 このような内科的治療によっても脳虚血発作の予防には限界があり、知能や運動機能に重い後遺症を残すこともあるので、その場合は外科的治療を行います。狭窄・閉塞部位に直接手術を行うことができないので、病変部より末梢側への外科的血行再建術が行われています。①直接法(浅側頭(せんそくとう)動脈・中大脳動脈吻合(ふんごう)術など)と、②間接法(脳・硬膜(こうまく)・動脈接着術)があります。

石和 俊

もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)
もやもやびょう(ウイリスどうみゃくりんへいそくしょう)
Moyamoya disease (Spontaneous occlusion of the circle of Willis)
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 もともとは、脳血管撮影をすると正常の太い動脈が写らず、毛のように細い多数の異常な血管がもやもやと写ることからついた名前です。

 正常な状態では脳の下面には図14のように太い動脈が互いにつながっていて、動脈の輪をつくっています。これをウイリス動脈輪といいます。この病気の本態は、ウイリス動脈輪がふさがったため、血流を補うために細い動脈が発達し、その細い動脈がもやもやした血管として見えているものです。

 正式にはウイリス動脈輪閉塞症といいます。日本、韓国、中国など東アジアに多くみられます。日本には約5300人の患者さんがいるとされています。

原因は何か

 内頸(ないけい)動脈がふさがる原因はわかっていません。10%に家族内発生があり、遺伝的素因もあると考えられています。

症状の現れ方

 年齢によって、症状が違います。若年型といわれる5歳前後に発症のピークがある型では、走る、泣く、熱い食べ物を吹いてさます、笛を吹くなどの過換気によって、一過性の脱力発作、感覚障害、意識障害、けいれん、頭痛などが起こります。

 成人型といわれる発症のピークが30~40代にある型では、脳実質内出血、脳室内出血、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)などの頭蓋内出血や、脳梗塞(のうこうそく)で発症します。

 小児では、知能障害がみられることもあります。

検査と診断

 脳血管撮影を行いますが、典型的な場合はMRA(磁気共鳴(じききょうめい)血管撮影)、MRIだけで診断できます。ウイリス動脈輪とその近くの内頸動脈、前・中大脳動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞と、もやもやした血管がみられれば、本症と診断されます。

治療の方法

 脳血管拡張薬、抗血小板薬を投与する場合があります。小児では、脳の表面に腱膜(けんまく)や筋肉を付着させて血行を促す間接的血行再建術、あるいは浅側頭(せんそくとう)動脈­中大脳動脈吻合術(ふんごうじゅつ)という手術を行うことがあります。

 成人型では手術が有効かどうかはわかっていません。何も治療をしないで経過をみる場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 神経内科、脳神経外科の専門医の診察を受けてください。

関連項目

 脳梗塞一過性脳虚血発作脳出血くも膜下出血てんかん

髙木 繁治


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EBM 正しい治療がわかる本の解説

もやもや病

どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 ウイリス動脈輪閉塞症(どうみゃくりんへいそくしょう)ともいいます。頸動脈(けいどうみゃく)が頭蓋内(とうがいない)に入った最初の部分の左右両側に、狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)がみられる脳血管障害の一種です。脳深部の血流不足を解消するため、無数の網目状の異常血管が新しくつくられます。脳血管撮影をすると、異常な血管がもやもやと映ることから、この名前がつけられました。
 子どもの場合は、大声で泣いたり、熱い食べ物に息を吹きかけたりして、過呼吸になったときに、言語障害や手足に力が入らない脱力発作、けいれん、視力障害、頭痛、意識障害などがおきます。成人の場合は、脳内出血をおこして片麻痺(かたまひ)や意識障害がみられます。また、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)をおこすこともあります。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 原因不明の病気で、厚生労働省の指定難病に選定されています。子どもの発症は、脳の血液量が足りなくなっておこる脳虚血発作(のうきょけつほっさ)の一つです。発作をくり返すうちに運動障害、言語障害、知能障害などの後遺症が残ることがあります。成人の場合は、突然の頭痛、嘔吐(おうと)に襲われ、脳内出血、くも膜下出血をおこします。

●病気の特徴
 日本人に多い病気で、日本で発見されました。欧米ではほとんどみられません。10歳以下にピークがある小児発症例と、30歳代にピークがある成人発症例があります。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

■出血した場合
[治療とケア]開頭血腫除去術(かいとうけっしゅじょきょじゅつ)を行う
[評価]☆☆
[評価のポイント] もやもや病の患者さんに対して、大脳の血腫を取り除く開頭血腫除去術を行った場合、手術の有効性が手術による有害性を上回るという確定的な結果を示した臨床研究は、現在までのところありません。開頭血腫除去術は、救命あるいは脳機能障害を軽減することを目的として行われます。(1)(2)

[治療とケア]直接血行再建術を行う
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] 出血型もやもや病の患者さんに対して、直接血行再建術を行うことは、内科的治療のみよりも、その後のすべての合併症や再出血を減らすことが、質の高い研究で示されています。しかし、差はわずかなこともありメリットとデメリットを考えて選択するべきでしょう。(3)

■出血のない虚血発作の場合
[治療とケア]抗血小板薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 脳虚血発作に対する対症療法として、血液を固まりにくくする抗血小板薬が用いられますが、その効果を明確に示した臨床研究は見あたりません。専門家が経験的に用いています。(1)
[治療とケア]脳硬膜血管接着術(EDAS)を行う(子どもの場合)
[評価]☆☆
[治療とケア]脳筋肉接着術(EMS)を行う(子どもの場合)
[評価]☆☆
[治療とケア]直接血行再建術を行う(成人の場合)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 脳の血液の流れが悪くなっている虚血部分の血流を確保し、虚血発作を予防するために、外科手術が行われます。成人の場合よく行われている手術が、浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)・中大脳動脈吻合術(ちゅうだいのうどうみゃくふんごうじゅつ)(STA-MCA吻合術)を代表とする直接血行再建術、子どもの場合は、頭皮にある動脈を硬膜に接着させる脳硬膜血管接着術(EDAS)などの間接血行再建術も有効であると報告されています。(2)


よく使われている薬をEBMでチェック

抗血小板薬
[薬名]バファリン(アスピリン・ダイアルミネート配合剤)
[評価]☆☆
[薬名]パナルジン(チクロピジン塩酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] 動脈硬化性疾患としての脳梗塞や脳血栓を予防する効果があることは信頼性の高い臨床研究で確認されていますが、もやもや病を対象としたものではありません。

カルシウム拮抗薬(きっこうやく)
[薬名]ペルジピンLA(塩酸ニカルジピン徐放剤(じょほうざい))(4)
[評価]☆☆☆
[薬名]アダラートL(ニフェジピン徐放剤)
[評価]☆☆
[評価のポイント] いずれの薬も脳虚血発作を予防する目的で用いられます。塩酸ニカルジピン徐放剤の効果については臨床研究によって報告されています。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
急性期に出血した場合は手術で血腫を除去する
 もやもや病では、現在までのところ、信頼性の高い臨床研究によって明確に有効性が示された治療はほとんどありません。しかし、脳内出血をおこした場合は、手術で開頭して血腫を除去することが妥当といえます。これは救命ないし脳機能障害を最小限に抑えるためで、現在の医学知識に基づくならば、当然の治療と考えられます。

出血がないときは抗血小板薬などで虚血発作を予防する
 脳内の出血はないものの、血流量が低下したために虚血発作をおこすことがあります。この虚血発作を予防する目的で用いられているのが、抗血小板薬や血管拡張薬、カルシウム拮抗薬などです。これらの薬の有効性についてはいまのところ、信頼性の高い臨床研究は見あたりません。

症状安定期に血行再建術を行う
 子どもでも成人でも、必要に応じて手術が実施されます。直接と間接の血行再建術があり、それを組み合わせる方法もあります。出血型もやもや病の患者さんに対し、直接血行再建術が内科的治療と比べて再出血を予防することは、日本の質の高いランダム化比較試験によって示されています。これらの血行再建術は、血流豊富な組織を脳表面に接着させることで新しい血管がつくられるのを促し、それによって脳内の足りない血流を補おうとするものです。
 いずれの手術を選択する場合にも、脳外科専門医の経験や技量が重要な決定要因となります。手術を受けるかどうか、どの手術を受けるかについては、十分な説明を受けたうえで最終判断をする必要があります。

(1)もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)の診断・治療に関する研究班. もやもや病. 難病情報センター. http://www.nanbyou.or.jp/entry/209 情報更新日 2015年2月20日
(2)ウイリス動脈輪閉塞症における病態・治療に関する研究班. もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン. 脳卒中の外科. 2009; 37: 321-337.
(3)Miyamoto S, Yoshimoto T, Hashimoto N, Okada Y, Tsuji I, Tominaga T, Nakagawara J, Takahashi JC; JAM Trial Investigators. Effects of extracranial-intracranial bypass for patients with hemorrhagic moyamoya disease: results of the Japan Adult Moyamoya Trial. Stroke. 2014 May;45(5):1415-1421.
(4)Hosain SA, Hughes JT, Forem SL, et al. Use of a calcium channel blocker (nicardipine HCl) in the treatment of childhood moyamoya disease. J Child Neurol. 1994 ;9:378-380.

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