六訂版 家庭医学大全科 の解説
〈腱損傷〉手指伸筋腱損傷
〈腱損傷〉しゅししんきんけんそんしょう
Extensor tendon injuries of the hand
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
伸筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力は骨に伝達されないので、手指を伸ばすことができなくなります。
皮下断裂には、突き指などの外力によって生じるものと、骨の突出による摩擦や病的
見落としやすい外傷と合併症
開放性損傷により手背部(手の甲)で腱が断裂した場合、MP関節(指の付け根の関節)での手指の伸展が悪くなります。しかし、手背部の伸筋腱は、腱間結合という組織で隣の伸筋腱と連結しているので、完全に伸展できなくても、ある程度までの伸展が可能です。
症状の現れ方
手指の関節が伸展できなくなります。どの関節が伸展できなくなるかは、伸筋腱が断裂した部位によって異なります。骨折と違って、強い疼痛を伴うことがないのが特徴です。DIP関節(指の第一関節)、PIP関節(指の第二関節)背側での皮下断裂は、放置すると伸筋腱のバランスがくずれ、それぞれスワンネック変形、ボタンホール変形という手指の変形に発展します(図31)。
検査と診断
創の存在、受傷歴の有無、手指関節の伸展が可能かどうかなどで診断は容易です。
治療の方法
開放性損傷の場合、できるだけ早期に創を開いて、短縮している腱の断端を引き寄せて縫合する必要があります。
DIP関節、PIP関節背側での皮下断裂は、一般的に保存療法で治療します。装具やアルミの板を用いて、手指を伸ばした状態で4週間以上固定します。この間、固定を外さないようにする必要があります。
手関節背側で生じた皮下断裂(多くは病的断裂)は手術が必要です。断裂した腱の断端同士を縫合することができない場合が多いので、
外傷を負ったら
早期に整形外科を受診することをすすめます。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報