腸X線検査(読み)ちょうエックスせんけんさ

改訂新版 世界大百科事典 「腸X線検査」の意味・わかりやすい解説

腸X線検査 (ちょうエックスせんけんさ)

小腸および大腸の病変を調べるためのX線検査法roentgenography。小腸X線検査と大腸X線検査に大別される。

(1)経口投与法 口から造影剤を飲んで行う胃X線検査(胃・十二指腸検査)にひき続いて時間を追って観察する方法である。この方法は,小腸の緊張の程度や運動に伴う複雑な粘膜襞の伸展不良による辺縁の状態を解明できる。しかし腸管の重なりなどにより微細な病変の判断をすることは困難である。

(2)二重造影法 チューブを口からトライツ靱帯付近まで挿入し,50~60W/V%の造影剤を約300~400ml注入して,一般には造影剤の先端が回腸末端部に達した時点で下部まで十分に空気を送入し,鎮痙剤を注射して全小腸の二重造影像を得る方法である。この方法は,約30分くらいの短時間で全小腸の二重造影像が得られ,良好な小腸の粘膜像および辺縁の状態を知ることができる。したがって,小さな隆起性あるいは陥凹性病変の診断には欠くことのできない検査法である。しかし,病変の忠実な描出には圧迫法を適宜応用する必要がある。

(1)経口法 経口的に造影剤を与えて大腸を全体としてあるいは経時的に検査する方法である。大腸の病変を診断するというよりは,大腸の生理的機能,通過の状態や大腸の走行および周囲臓器との関連を知るための検査と考えられる。したがって,大腸の微細な病変を詳細に知ることは困難であるが,限局性の狭窄や通過障害を伴う悪性病変は診断できる。しかし腸閉塞が疑われる場合は,この検査法は禁忌である。

(2)注腸法 この検査法が成功するか否かは,前処置により大腸の内容を十分に排出させるか否かによる。充盈(じゆうえい)法は造影剤800~1000mlを全結腸に注入して検査する方法である。結腸管腔の辺縁の硬化や圧迫による陰影欠損を示すような,辺縁に現れた像しか把握ができない。粘膜法は,充盈法を行った後で行われるもので,造影剤を排出させると粘膜襞の像が得られる。注入された多量の造影剤は必ずしも十分に排出されない場合もあり,また粘膜襞がまったく認められないこともある。潰瘍性大腸炎では,よい病変像を明確に描写することが多い。

(3)二重造影法 フィッシャー法(1923)は,充盈法の後に注入した造影剤を排出させて粘膜像を撮影し,のちに空気を送入して二重造影を行う方法である。ブラウン法(1961)およびその変法は,鎮痙剤を与えたのちに少量の造影剤を注入し,その後に空気を送入して二重造影像を得る方法である。現在はもっぱらこの方法が用いられている。実施方法は,左側臥位で60W/V%の造影剤を200~300ml注入し,腹臥位で空気を回盲部末端まで十分に造影剤とともに注入して,網の目模様の細かいちりめん模様のきれいな粘膜像の二重造影像を撮影する。その間に体位変換を利用して,それぞれの部分を中心に全般的撮影をする。この方法を用いることで微細な隆起性および陥凹性病変を正確に描出し,切除腸標本に最も忠実な造影法といえる。しかし,潰瘍性大腸炎を主とする炎症性疾患では,二重造影法以外の検査法の特性を生かして実施することもある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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