膨潤炭(読み)ぼうじゅんたん(英語表記)bojuntan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「膨潤炭」の意味・わかりやすい解説

膨潤炭
ぼうじゅんたん
bojuntan

石炭タール等を加えて熱処理することにより得られる膨潤化した瀝青(れきせい)質。微粉砕した石炭に対してタール系溶剤を数倍量加え、常圧下の反応装置で300℃前後、数時間加熱処理すると、全体的に均質なピッチ状外観をした瀝青質(ビチューメン)が得られる。これは、まず最初に石炭粒子と石炭への親和力の大きい溶剤との間に、加熱によって融解・溶解反応が生じ膨潤化することによるため膨潤炭と名づけられた。

 1950年(昭和25)ごろに日本で発明された独創的な技術であり、製造および利用の方法も工業技術院資源技術試験所(後の公害資源研究所、現在の産業技術総合研究所つくばセンター)で長年研究され、種々の目的で実用化されている。製品中の灰分を分離除去しないで利用するのが特徴であるため、原料石炭としては、灰分が少なくかつビチューメン量の多い粘結炭ほど有利であるが、非粘結炭からでも製造できる。このように原料石炭や溶剤の種類、処理温度、時間などを適当に選択することによって、かなり広範に性状を調整することができる。膨潤炭は、粘結力が強いうえに、耐水、耐薬、耐油、耐熱性である。これらの多く特性を利用して、1965年ごろまではコークス配合用原料、練炭用粘結剤、また、道路および耐薬床面の舗装材、屋根葺(ふ)き材、防水材、さらには水道造船の防食用塗料などに利用されていた。

 この方法の発展形として、溶剤として石油系重質油を用い、石炭の熱分解温度付近(400~500℃)で処理する方法(ソルボリシス法)も提案された。

上田 成・荒牧寿弘]

『木村英雄・藤井修治著『石炭化学と工業』(1977/増補版・1984・三共出版)』

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