ピッチ(読み)ぴっち(英語表記)pitch

翻訳|pitch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ
ぴっち
pitch

石炭や木材などの有機物質を乾留して得られるタール原油石油留分を熱や触媒を用いて分解した際に得られる副生黒色重質油を蒸留した残留物。常温で固体、高温で溶融して液体となる黒色物質の総称である。ポリ塩化ビニル樹脂の高温下で塩酸離脱、熱分解によっても得られる。成分は石油系と石炭系とで異なるが、いずれも芳香族縮合環を骨格とし、分子量分布が数百から数千にわたる化合物の混ざり合ったものから構成されている。軟化点の低いほうから高いほうに、軟ピッチ、中ピッチ、高ピッチとよばれる。ピッチのおもな用途は、ピッチコークス製造原料のほか、炭素電極練炭などを製造するときの成形用粘結材、舗装材、防水材に向けられる。ピッチを改質し紡糸、焼成して炭素繊維がつくられている。

[真田雄三]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説

ピッチ
pitch

声帯から発せられる声の高さをさす。振動数大小に比例し,それが大きいほど高い。言語音としては,普通は有声音についていい,それに伴う声の基本音の高さをいう。したがって,無声音にはこの意味の高さがないことになるが,音韻論的にはそこに高さがあると解釈されることもある。東京方言話し手のなかにみられる/ ki˥sja / (貴社) や/ ki˥ta / (来た) の[k]など。文音調 (→イントネーション ) ,声調,高さアクセントは,この高さが一定の社会的習慣の型をなしているものをいう。なお高さは,このほかに,母音フォルマントの高さをさすこともある。これは1人の個人においては各母音ごとにほぼ一定していて,発する声の高さには無関係である。

ピッチ
pitch

通常,同じ形状のものが等間隔に配列されているとき,その間隔の寸法をさす。 (1) ねじ ねじの軸線を含む断面において,互いに隣合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行にはかったときの長さ。 (2) 歯車 ある規定された曲線に沿って,互いに隣合う歯面の相対応する2点をはかったときの長さ。通常,その曲線の名称をつけて呼ぶ。たとえば,ピッチ円 (またはピッチ線上) ではかった場合を円ピッチ,正面ではかったときを正面ピッチなどという。 (3) ばね コイルばねの中心線を含む断面において,互いに相隣る素線の中心を中心線に沿って測定したときの長さ。 (4) プロペラ プロペラが1回転する間に進む距離。しかし,一般に1回転する間に進む距離はプロペラに固有のものでなく,プロペラの運動状態を表わす値であるので,これを有効ピッチという。飛行機の場合その速度を V とし,プロペラの回転数を n とすると,有効ピッチは V/n で表わされる。プロペラの断面は翼形をなし,その弦巻線がボルトとナットのように空気を変形させることなくねじこまれていくとしたとき,1回転の間に進む距離を幾何ピッチという。

ピッチ
pitch

コールタール,石油脂肪酸,石炭,木材などの蒸留,乾留,熱分解で生じる粘着性炭質残留物。グランスピッチ (硬質アスファルト) のように天然に産するものもある。一般に常温で固体または半固体状の黒褐色の芳香族系化合物。密封剤や木材の防腐剤などに利用される。また,石油の分解残渣油である石油ピッチは燃料,コークス粘結剤,電気絶縁材料や合成炭素繊維などに利用される。

ピッチ
pitch

音楽用語。音の高さのこと。音波の振動数により決定される。振動数が多ければ高く,少なければ低い。音楽に用いられる楽音は種々の部分音から成る複合音であるが,このなかの第1部分音の振動数により音高が決定される。なお,管弦楽のような合奏には,音合せの基準となる高さを必要とするが,今日一般にとられるピッチは1点イ=440ないしはやや高めである。

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