日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピッチ」の意味・わかりやすい解説
ピッチ
ぴっち
pitch
石炭や木材などの有機物質を乾留して得られるタール、原油、石油留分を熱や触媒を用いて分解した際に得られる副生黒色重質油を蒸留した残留物。常温で固体、高温で溶融して液体となる黒色物質の総称である。ポリ塩化ビニル樹脂の高温下で塩酸の離脱、熱分解によっても得られる。成分は石油系と石炭系とで異なるが、いずれも芳香族縮合環を骨格とし、分子量分布が数百から数千にわたる化合物の混ざり合ったものから構成されている。軟化点の低いほうから高いほうに、軟ピッチ、中ピッチ、高ピッチとよばれる。ピッチのおもな用途は、ピッチコークス製造原料のほか、炭素電極、練炭などを製造するときの成形用粘結材、舗装材、防水材に向けられる。ピッチを改質し紡糸、焼成して炭素繊維がつくられている。
[真田雄三]