自動診断(読み)じどうしんだん(英語表記)computer-aided medical diagnosis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動診断」の意味・わかりやすい解説

自動診断
じどうしんだん
computer-aided medical diagnosis

医師の診断過程を客観的な記述論理、もしくは数学的手順として表し、これをコンピュータを用いて処理し、結論を導こうとする方法をいう。医師の診断過程は、そのほとんどが標本照合であって、手法としては総当り的接近法、枝分れ的接近法、仮説演繹(えんえき)的接近法、ゲシュタルト的(形態的)接近法のいずれか、または複数の組合せが用いられている。このうち、これまでコンピュータによって処理自動化をしえたのは、枝分れ論理ないし総当り論理であり、数学的手法であるベイズ定理、尤度(ゆうど)法、あるいは多変量解析法などがよく使われてきた。しかし、最近ではコンピュータの能力向上に伴って、人間の認知過程を扱う知識工学あるいは人工知能理論が進歩し、仮説演繹的接近法もコンピュータで処理できる見通しが得られているし、将来はゲシュタルト的接近法も実行可能になると考えられている。

 心電図のコンピュータ処理は、現在実用化している自動診断の一例で、これは心電波形の特徴を波の高さや変曲点を基に自動判読し、医師の診断論理に照らし合わせて分類し、メッセージ文を出力するというものである。標本照合の方式は枝分れ論理であり、速度は専門医よりも速い。また、大型コンピュータによる心電図の自動診断を電話などの通信回線を利用して行うと、専門医よりはるかに多数の実例を短期間に集めることができるだけでなく、診断論理そのものの改良にも役だつことが証明されている。

 自動診断における知識工学的な応用としては、専門知識のコンサルテーションシステム(専門知識や判断を助言するコンピュータシステム)が実用化しつつある。ベイズの定理や多変量解析法も、データに欠落がない状況にあっては、治療法選択、予後推定などに用いられ、その精度は医師よりも優れている。疾病発症の予測に対しては、統計学的な多重ロジスティック関数や指数ワイブル分布が応用され、個人と集団の健康指導に役だっている。

[古川俊之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の自動診断の言及

【医用画像処理】より


[医用画像処理の特殊性]
 画像処理における医用画像の特殊性は,画像に表示される形態の複雑さ,それに伴う解像度の大きさ,階調の深さ,X線CT装置などのような被曝を伴う装置におけるデータ取得時の線量制限に伴う画像解像度の制限,ノイズの混入,同じ部位を撮影しても個人差により生じる画像の違いなどがあげられる。また,医用画像からの診断においては,診断の際に,医学的知識・経験が重要な役割を果たすことになるので,コンピューターによる自動診断が難しいなどの点があげられる。
[医用画像処理の意義]
 第1の意義は,CT,MRIにおける生の収集データから断層像を得るということに代表される,診断するための画像を作成するということである。…

※「自動診断」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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