日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
自動車排出窒素酸化物総量削減法
じどうしゃはいしゅつちっそさんかぶつそうりょうさくげんほう
自動車から排出される窒素酸化物(NOx)が大気汚染の重要な原因となっていることから、その総量を削減するために制定された法律。1992年(平成4)6月3日公布。1992年12月1日から(特定自動車の排出基準は1993年12月1日から)施行された。正式名称は「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」。2001年には名称に「及び粒子状物質」が加わり、「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(略称NOx・PM法)となった。同法によれば、国は自動車交通量が多くて二酸化窒素(NO2)の環境基準の確保が困難な地域として政令で定められる地域(「特定地域」)について、自動車排出NOx総量の削減の目標、施策の基本的事項などに関する基本方針を定める。特定地域としては、2007年現在、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府、兵庫県の一定区域が指定されている。都道府県知事は、基本方針に基づき特定地域における自動車排出NOxを削減する総量、その達成期間および方途などを内容とする総量削減計画を定める。この計画を達成するためにとられる方策は、特定自動車(大型ディーゼル車など)についてNOxの特別の排出基準を定め、それを遵守させることである。ただ、現実には、経過措置によって現在使用中の自動車については猶予期間が定められるため、一定期間ののちに基準適合車にかえられていくこととなる。したがって、環境基準の達成にはなお時間を要するであろう。なお、本法制定の過程では、自動車排出NOxを削減するためには汚染がひどい地域への自動車の乗り入れを制限するなどの総量抑制が必要との意見(本法制定のための研究会の中間意見書)が出されていたが、法律には導入されなかった。著しい汚染が改善されない場合には、このような方法の導入も将来問題となろう。
[淡路剛久]