改訂新版 世界大百科事典 「自生粉砕」の意味・わかりやすい解説
自生粉砕 (じせいふんさい)
autogenous grinding
大量の鉱石やセメント原料などを微粉砕するためには,ボールミルやローラーミルなどが広く使われているが,自生粉砕はボールミルのような回転容器の中に,鉄ボールの代りに粉砕原料の塊を使用する方法である。鉱石塊の比重はたかだか2.5~3.5程度であり,鉄の比重に比してはるかに小さく,同じ条件では鉄のボールのように強い粉砕力を得ることができない。そこで自生粉砕のために設計された特殊な形状および構造のミルが使われる場合が多い。これらを自生粉砕ミルと呼ぶ。自生粉砕ミルには,エーロフォールミル,カスケードミルなどがある。これらの自生粉砕ミルはいずれも普通のボールミルに比べると直径/長さ比が大きく,内壁には粉砕媒体である鉱石塊をミルの回転にともなって高く持ち上げることにより強い衝撃力が得られるよう,リフターバーが取り付けられている。
自生粉砕においては,クラッシャーなどの粗砕設備を用いず,10~30cmの大塊から一挙に微粉砕を行うことができるため,粉砕系統が単純化され,しかもボールなどの鉄材の消費が少ないという利点をもっている。しかし反面,粉砕結果が鉱石の質や粒度によって左右されやすく,また電力消費がボールミルなどによる粉砕方式に比べて若干多くなる場合がある。
ふつうのボールミルとほぼ同じ形状・構造のミルに粒度調整された塊鉱やケイ石などを粉砕媒体として使用するミルはペブルミルと呼ばれている。ペブルミルは,金属鉱物資源を処理する選鉱工場ばかりでなく,粉砕時の鉄分の混入を嫌う窯業原料の微粉砕にも広く使われてきた。自生粉砕は世界の近代的選鉱工場でかなり広く採用されているが,日本では,窯業関係で〈ともずり〉と呼び習わされたペブルミル粉砕を除き,ほとんど例をみない。
→粉砕機
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報