花柳春話(読み)カリュウシュンワ

デジタル大辞泉 「花柳春話」の意味・読み・例文・類語

かりゅうしゅんわ〔クワリウシユンワ〕【花柳春話】

織田純一郎翻訳小説。明治11年(1878)刊。英国の作家リットンの「アーネスト=マルトラバーズ」(1837年作)とその続編原作とする。富裕層の青年アーネストが、さまざまな困難を乗り越えて愛する女性と結ばれるまでを描く。欧州奇事花柳春話。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花柳春話」の意味・わかりやすい解説

花柳春話
かりゅうしゅんわ

明治初期の代表的な翻訳小説。 1878~79年刊。イギリスの政治家 E.G.リットン卿の小説『アーネスト・マルトラバーズ』とその続編『アリス』を丹羽 (織田) 純一郎が抄訳したもの。上流階級出身の主人公アーネストと庶民の家に生れた女主人公アリスが相思間柄となり,多くの障害を乗越え,試練うちかったのち,めでたく結ばれるという筋で,ゲーテの『ウィルヘルム・マイスター』の流れをくむ一種教養小説である。原作は特に傑作というほどのものでなく,訳文も当時流行の漢文直訳体だが,西洋小説の最初の本格的な翻訳紹介として清新な感動を与え,大いに世に迎えられた。

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世界大百科事典(旧版)内の花柳春話の言及

【イギリス文学】より


[日本文学との関係]
 明治維新で西欧の新知識に触れることのできた日本人は,同時代のイギリス19世紀の作家たち,例えばブルワー・リットンやディズレーリの〈政治小説〉をいち早く移入し,翻訳した。早くも1878年に出版された丹羽(織田)純一郎訳《花柳春話》の原作は,リットンの《アーネスト・マルトラバーズ》(1837)であった。当時の日本の読者は,小説が政治や実人生の問題に指針や解答を与えてくれるという実践的効用を期待していたのである。…

【ブルワー・リットン】より

…社交界の上流青年の恋と政治の遍歴物語《ペラム》(1828),《アーネスト・マルトラバーズ》(1837),犯罪を社会問題とし,犯罪者を同情的に描く《ポール・クリフォード》(1830),《ユージン・アラム》(1832),ローマ時代の歴史小説《ポンペイ最後の日》(1834)などが有名である。日本でも《アーネスト・マルトラバーズ》(丹羽純一郎訳《花柳春話》1878)をはじめ,多くの作品が明治10年代に翻訳され,西洋小説翻訳史上,D.デフォーやJ.ベルヌらと並んで先駆をなした。【海老根 宏】。…

※「花柳春話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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