花虫類(はなむしるい)(読み)はなむしるい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「花虫類(はなむしるい)」の意味・わかりやすい解説

花虫類(はなむしるい)
はなむしるい

腔腸(こうちょう)動物門の1綱Anthozoaを構成する動物群。「かちゅうるい」ともよばれる。腔腸動物の生活型の二型すなわち底着性のポリプ型と浮遊性のクラゲ型のうち、ポリプ型のみが発達したグループである。単生のものと群体をつくるものがあり、各ポリプは基本的には円筒形で上部に触手が環生する。触手環の中央に裂状の口が開き、内部はやや広い腔所となり胃腔gastro-vascular cavityあるいは腔腸coelenteronとよばれる。口からは円筒形の口道が胃腔内にぶら下がり、円筒形の胃腔内には放射状に隔膜mesenteryが配列し、その一部は幅広く、胃腔上部で口から下がる口道の壁に癒着する。口道の一側あるいは両側繊毛の密生した溝である管溝が上下に走るが、管溝を欠くものもある。隔膜の片側にはポリプを上下に縮めるときに用いられる筋肉の盛り上がりである筋旗(きんき)が上下に走るが、ツノサンゴ類では筋旗を欠く。隔膜のうち上部で体壁内面から口道にまで達するものを完全隔膜、口道にまで達しないものを不完全隔膜とよび、隔膜が対(つい)をなして発達してくるイシサンゴ類イソギンチャク類、ホネナシサンゴ類では対をなす隔膜に挟まれた胃腔の部分を内腔、対をなさない隣り合った隔膜によって挟まれた胃腔の部分を外腔と称する。この類の外形および内部構造は、一見、放射相称のようにみえるが、管溝と隔膜の筋旗の方向によって、裂口の縦方向に対称軸をもつ二軸放射相称となり、完全な放射相称となる腔腸動物門のほかの2綱すなわちヒドロ虫類およびハチクラゲ類と異なる。

 現生の花虫類のなかには14目が知られるが、それらは8枚の隔膜と8本の羽状触手を備えるポリプをもつ八放サンゴ亜綱と、6枚あるいはそれ以上の隔膜と一般的には単純な形の触手をもつ六放サンゴ亜綱とに二分される。六放サンゴ亜綱のなかにもわずかながら羽状突起をもつ触手をもつものがあるが、それらの隔膜は12枚よりはるかに多い。すべて海産で、一部汽水域からも知られるが、淡水および陸上にはいない。世界中の海の浅海より深海に広く分布する。現生種を含む2亜綱のほかに四放サンゴ亜綱、床板サンゴ亜綱(しょうばんさんごあこう)、分裂サンゴ亜綱Schizocoralliaの、絶滅した種のみを含む三つの亜綱がある。

[内田紘臣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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