日本大百科全書(ニッポニカ) 「草食魚」の意味・わかりやすい解説
草食魚
そうしょくぎょ
herbivorous fish
陸草、水草、藻類などを主食にして十分に成長する魚類をいう。淡水魚ではアユとソウギョ(草魚)が代表的である。アユは成魚になると川底の岩石や小石に付着する珪藻(けいそう)や藍藻(らんそう)を1日に20グラム余り食べる。ソウギョの稚魚は浮き草を、成魚はセキショウモ、アマモ、フサモなどのほか、アシやクローバーなどの陸草も多食する。ソウギョは中国から食用に移入された外来種であり、湖沼、河川の水草や浮き草を駆除するために日本各地に放流された。しかしそこを生息・産卵場所としている在来生物に影響を与え、排泄(はいせつ)物は水質汚染をおこす可能性が出てきたことから、環境省は要注意外来生物にリストアップしている。
海水魚では、サンゴ礁や岩礁にすむニザダイ類、アイゴ類、メジナ類、ブダイ類、イスズミ類などが海藻類を多食する。ニザダイ類のクロハギ類やヒレナガハギ類は褐藻のシオミドロ、クロガシラ、紅藻のイギス、イトグサ、テングサなどを常食にしている。また、アイゴ類はとくに緑藻のアオノリ、ツユノイト、ミドリゲを好んで食べる。サンゴ礁の草食魚は、食中毒(シガテラ)をおこす肉食性の大形魚の餌(えさ)となる。この有毒成分は藻類に含まれ、草食魚を通じて肉食魚に蓄積される。
[落合 明・尼岡邦夫]