シガトキシンciguatoxinという毒素をもつ魚類によっておこる食中毒。名前はカリブ海に生息する巻き貝のシガcigua(チャウダーガイ)による食中毒に由来する。世界の熱帯、亜熱帯海域に生息する400種以上の魚種から報告されている。魚の餌(えさ)になるサンゴ礁で育っている石灰藻類を藻食魚が食べると、それに付着する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)Gambierdiscus toxicusでつくられた毒が、藻食魚から食物連鎖を通して、ほかの魚の体内に蓄積することがある。毒は筋肉より内臓に多い。これらの魚を食べると、口や手足などのしびれ、ドライアイスセンセーション(温度感覚異常)、めまいなどの神経障害、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢などの胃腸障害をおこし、ときには死ぬことがある。日本での死亡例は報告されていない。神経障害は回復が遅くて数か月続くことがある。日本では亜熱帯の沖縄、奄美(あまみ)諸島周辺にいるハタ類(バラハタ、マダラハタなど)、フエダイ類(バラフエダイ、イッテンフエダイなど)、ニザダイ類(サザナミハギなど)、カマス類(オオカマスなど)のほか、ある種のブダイ類、ベラ類、カマス類など20種ほどがこの毒をもつことが知られ、これらを食べて食中毒がおきているが、2000年ごろから、地球温暖化によって本州でも疑われるような症状が報告されている。
[尼岡邦夫 2015年6月17日]
熱帯から亜熱帯海域、とくにサンゴ礁海域に生息する魚類を食べることによって起こる致死率の低い食中毒をシガテラと総称しています。日本では南西諸島が中毒海域にあたります。
中毒症状は非常に複雑で、温度感覚異常(水に触れるとドライアイスに触れたような感覚になるシガテラ特有の症状で、ドライアイスセンセーションと呼ばれている)、筋肉痛、関節痛などの神経系障害、下痢、嘔吐などの消化器系障害、血圧低下などの循環器系障害がみられます。とくに神経系障害は長時間続くことが多く、回復に数カ月を要することもあります。
シガテラ毒魚は数百種に及ぶといわれていますが、とくに問題となる魚種はウツボ科のドクウツボ、カマス科のドクカマス(オニカマス)、スズキ科のマダラハタ、バラハタ、フエダイ科のイッテンフエダイ、バラフエダイ、ブダイ科のナンヨウブダイ、ニザダイ科のサザナミハギなど約20種です。
毒性は内臓のほうが筋肉の数倍ほど高いのですが、食中毒の大半は筋肉を食べることによって起こっています。また、毒性は藻食魚よりも肉食魚のほうが、小型魚よりも大型魚のほうが一般に高い傾向があり、同じ魚種でも個体、漁獲場所、漁獲時期により無毒から強毒まで著しい差があり、中毒発生の予知を困難にしています。
シガテラ毒の主成分は脂溶性のシガトキシンで、そのほかに水溶性のマイトトキシンが知られています。これら毒成分の産生者は、ガンビエルディスカス・トキシカスという有毒プランクトン(
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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