改訂新版 世界大百科事典 「アイゴ」の意味・わかりやすい解説
アイゴ
Siganus fuscescens
スズキ目アイゴ科の海産魚。体は長楕円形で側扁し,非常に小さい円鱗をもつ。全長30cm以上になる。この類は3軟条の前後に棘(きよく)があるという他の類には見られない腹びれをもっており,両棘類とも呼ばれる。ウサギのような顔をしているというので英名はrabbit fish。背びれ,しりびれ,腹びれの棘には毒腺があり,刺されるとひどく痛むので,富山でイタイタ,イタダイ,山口でオイシャの別名がある。アイはとげ,ゴは魚のことで,各地でアイ,アエ,エエ,エエノウオ,ヤアノウオ,ヤイ,イエーなどの呼名がある。茶褐色ないし黄褐色の地に白っぽい斑紋をもつが,同じ個体でも瞬時に体色,斑紋を変化させるほど,体色,斑紋の変化は著しい。磯近くにメジナなどと群生する。定置網,刺網,引網などで漁獲する。沖縄ではサツマイモを餌とするアイゴ籠がある。産卵期は7~8月でこの時期が美味。
刺身,煮つけ,塩焼き,みそ汁のほか,沖縄では油いためにする。徳島で皿ネブリというように美味として珍重する地方もあるが,皮と腹中が小便臭いといわれ,熊本でショウベンウオ,静岡,和歌山,瀬戸内,九州北部にかけてバリ,バリタレ,アイノバリ,アイノマリ,エエバリなどという。雑食性だが海藻を好み,海藻の食べ方で味が異なるようである。釣餌として酒かすを主とした練餌を使うが,ムキエビ,ゴカイ,イソメなども使われる。暖海性の魚で本州中部以南に分布。稚魚を沖縄でシュク,あるいはスクといい,スクガラスはその塩辛。旧暦6月の大潮に岸に群れ寄せる稚魚を漁獲してつくる。この科の魚は日本近海に14種見られるが,アイゴ以外は奄美大島以南に分布する。
執筆者:清水 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報