アカマツ林のマツタケや雑木林のムラサキシメジ、サクラシメジなどが円い輪を描いて生えているのにしばしば出会う。これを菌輪あるいは菌環という。英語ではフェアリー・リングfairy-ringといい、日本では妖精(ようせい)の輪とか仙女の輪と訳したこともある。芝生や草原が多い欧米では珍しい現象ではない。こうした菌輪をつくりやすいキノコにはシバフタケ、ハラタケなどがある。輪は、キノコの発生期でなくても、その部分の草だけが丈が高くなり、濃い緑をして生えそろうので、遠くからでも認められる。欧米では昔から注目され、不思議がられ、深夜に妖精や仙女が現れて踊り場としたと考えた。その後、雷とか稲妻の刺激でできるとも考えられたが、実はキノコの生活の本体である菌糸が土の中で放射状に伸び広がり、季節がくると菌糸の先端部に繁殖のためにキノコをつくることがわかった。菌糸の先端部は活力旺盛(おうせい)で有機質の分解がよく、草も栄養がよい。輪は年々外へ広がるが、その速さは1年に10~30センチメートルなので、輪の直径によって菌輪の年齢が知られる。欧米には径数百メートルに達し、300年以上も経過したものもある。輪の中には同じキノコは生えない。
[今関六也]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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