中国中東部の地区名。一般には長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))中流部にあたる湖南(こなん/フーナン)、湖北(こほく/フーペイ)、江西(こうせい/チヤンシー)の3省にわたる地域の総称として用いられる。ただし新中国になってからは江西省を華東地区に、湖北省、湖南省を中南地区に含める地域区分がしばしば使われる。これはもともとは軍事的な管区の区分であったが、現在は経済協作(協力)区としてもこの区分が使われ、華中は行政的な地域区分としてはあまり使われない。
華中は、北は大別(だいべつ/ターピエ)山脈などを境として華北と、南は南嶺(なんれい/ナンリン)によって華南と、西は巫山(ふざん/ウーシャン)山脈などによって西南(四川(しせん/スーチョワン))、貴州(きしゅう/コイチョウ)両省と境され、東南は武夷(ぶい/ウーイー)山脈により福建(ふっけん/フーチエン)省と分けられる。華東の安徽(あんき/アンホイ)、浙江(せっこう/チョーチヤン)両省との境には明瞭(めいりょう)な自然境界はない。華中は洞庭湖(どうていこ/トンティンフー)周辺の両湖(りょうこ)(江漢)平原と鄱陽湖(はようこ)平原を中心とし、漢水(かんすい/ハンショイ)、湘江(しょうこう/シヤンチヤン)、贛江(かんこう/カンチヤン)など長江の大支流のつくる広い河谷が南北に広がるが、周辺には山地が多い。平野部は米、ワタ、菜種の産地で、丘陵部はやせた赤色土だが良質の茶とサツマイモを産する。また山地では漆、桐油(とうゆ)、椿油(つばきあぶら)(茶油)、松脂(まつやに)などの林産物と杉材の産出が多い。武漢(ぶかん/ウーハン)、長沙(ちょうさ/チャンシャー)、株州(しゅしゅう/チューチョウ)、衡陽(こうよう/ホンヤン)、南昌(なんしょう/ナンチャン)、十堰(じゅうえん/シーイエン)など工業都市も発達し、軽工業以外に製鉄(武漢)、自動車(十堰)をはじめ重化学工業も盛んで、景徳鎮(けいとくちん/チントーチェン)は磁器の伝統的産地である。石炭、石油も若干生産されるが、むしろ鉄(大冶(だいや/ターイエ))、銅、タングステンなど鉱産物で知られる。また長江水系には葛洲壩(かっしゅうは)、丹江口(たんこうこう)など多くの大型ダムが建設され、さらに2009年には三峡ダムも完成した。歴史的には戦国の楚(そ)にあたり、各地で貴重な遺物の発見が相次ぎ、馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)からはきわめて多数の貴重な遺物が発見された。赤壁(せきへき)その他史跡もあるが、とくに井岡山(せいこうざん/チンカンシャン)や韶山(しょうざん/シャオシャン)(毛沢東(もうたくとう/マオツォートン)の旧居がある)、瑞金(ずいきん/ロイチン)をはじめ、中国革命にゆかりの場所が多い。
[河野通博]
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中国の大地域名。大別山脈以南,南嶺以北,三峡以東の長江(揚子江)中・下流域に属する湖北,湖南,江西,安徽,江蘇,浙江の6省と上海市にわたる地域を指すことが多く,またこれを華中と華東に分け,湖北,湖南,江西の3省のみを華中と呼ぶこともある。現在では経済協作区としては,狭義の華中3省に河南,広東2省と広西チワン族自治区とを加えて,中南区と呼んでいる。
執筆者:河野 通博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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