日本大百科全書(ニッポニカ) 「華東」の意味・わかりやすい解説
華東
かとう / ホワトン
中国東部の地区名。一般には上海(シャンハイ)市と江蘇(こうそ/チヤンスー)、安徽(あんき/アンホイ)、浙江(せっこう/チョーチヤン)の3省にわたる地域をいうが、新中国成立後にはこれに山東(さんとう/シャントン)、江西(こうせい/チヤンシー)、福建(ふっけん/フーチエン)、台湾の4省を加えた1市7省の範囲を華東区とよぶことが多い。これは広域的な経済協作(協力)区として全国を六大区に区分した際の地域区分である。
1市3省の華東は、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))下流の平野を中心にして、それに隣接する銭塘江(せんとうこう/チエンタンチヤン)流域が主体の浙江省を加えたもので、古来「魚米之郷」とよばれた水郷地帯が広がり、とくに江南デルタ(長江下流部南方のデルタ地帯)は米作の中心地で、中国の穀倉として知られてきた。また綿作、養蚕、製茶が盛んな豊かな農村が多い。1980年代以後は江蘇省農村部には中国でもっとも多く郷鎮企業(1980年以降に生まれた町村営の農村企業)の工場が立地し、電子工業をはじめとする農村工業が進んでいることでも有名である。浙江省もこれに次いでいる。都市の数も多く総合工業都市上海のほか、多くの絹や綿の紡織を中心とする工業都市が立地し、重化学工業も発達している。上海はまた中国最大の貿易港で、現在、浦東地区の都市建設が急速に進んでいる。古都南京(ナンキン)の近代化も著しく、また杭州(こうしゅう/ハンチョウ)、蘇州(そしゅう/スーチョウ)、揚州(ようしゅう/ヤンチョウ)などの歴史的都市を大運河が結んでいる。
広義の華東区(1市7省)は、山東省の石油、石炭、および安徽省の石炭、鉄、銅など、豊かな地下資源と、浙江省、福建省の水力電気とを基礎とする海に臨んだ地域で、重化学工業も軽工業も各地で発達している。農産物のほか、山東、福建、浙江各省では水産業、製塩業も発達しており、将来は長江中流部をも含めた大型の工業化の進んだ経済地域を形成することを目ざしている。
[河野通博]