翻訳|gleaning
ヨーロッパの中世から近世にかけて,農村共同体がその重要な機能である弱者の保護と扶養の一つの手段として,収穫後の耕地に散乱する落穂を,老人,寡婦,孤児,廃疾者などに拾うことを許した慣行。当時の共同体的土地制度のもとでは,農民が自己の耕地を排他的に用益しうるのは作物の栽培中だけで,残りの期間はこれを共同的用益にゆだねなければならなかったが,落穂拾いはその先頭を切って行われるもので,刈取りないし庫納めと共同家畜群の放牧開始の間の数日を定め,共同体の収穫監視役の監督のもとに,通常の労働では生計を支えられない者に耕地を開放した。それは,村法によって細目を定めつつ,村落共同体を単位として実施されたばかりでなく,個別共同体の枠にとらわれずに行われ,落穂に対する貧者一般の権利という社会的観念が根づくほどであった。しかし,農業近代化に伴って,耕地への個人的用益が確立される過程で多くの紛争を引き起こした後,19世紀までに基本的には消滅する。
執筆者:森本 芳樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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