落網(読み)おとしあみ

精選版 日本国語大辞典 「落網」の意味・読み・例文・類語

おとし‐あみ【落網】

〘名〙
① 獣を捕えるための、網でつくったわな。
※幼学読本(1887)〈西邨貞〉五「獅子は〈略〉猟師が設け置きたるおとし網に懸りけり」
② 建網(たてあみ)一種垣網をたてて誘導した魚を魚捕網(ふくろ網)に入れる途中に、漏斗状の乗上がり網を付け、魚捕網を広く深くし、乗上がり網を通って一度魚捕網にはいった魚は、返しがあって再び逃げ出せないようにしてある。小型のものが江戸末期から使用されていたが、大正期に至って、この漁法在来定置網に導入され、その大型化とともに、画期的な能率魚網となった。ふくべ網。地獄網。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「落網」の意味・わかりやすい解説

落網
おとしあみ

垣網,登網および箱網の3部から成るものと,さらに囲い網を加えた4部から成る定置網総称。現在の定置網の多くは落網で,1度入網した魚類の逸散を防ぐために二重落網にしたものや,天井網を敷設したものなどがある。大敷網大謀網と異なり,揚網は箱網部だけを繰り起すので労力軽減がはかられる。

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世界大百科事典(旧版)内の落網の言及

【大敷網】より

…これはより高能率の大規模漁網であったから他府県に普及し,各地の台網類の改良を促進する役割も大きかった。それがさらに改良されてより高能率の落網(おとしあみ)の時代に入っていくことになるが,それは昭和期以降のことであった。【二野瓶 徳夫】。…

【漁具】より

…漁獲,すなわち水産動植物を採捕するのに用いられる道具。漁獲の方法を漁法というが,漁法は漁具の運用方法ということもできる。水産動植物の採捕は対象生物の生態・習性・行動などに応じて,最も適当な方法をとるわけで,漁具と漁法は密接に関連して選ばれる。
【分類】
 漁獲は水中に生活する動植物を陸上生物である人間が採捕するのであるから,水から魚介類を分けることが最終的には必ず行われる。したがって,生物体を直接,なんらかの方法(引っ掛ける,突く,挟むなど)で保持して水から揚げるか,水と生物をこし分けるかのどちらかが必要になる。…

【台網】より

…これらのうちとくに注目されてよいのは1892年宮崎県の日高亀市・栄三郎父子による大敷網の発明,また同父子による1910年の大謀網の考案,12年富山県の上野八郎右衛門による上野式大敷網の発明などがあげられる。かくして台網の技術改良による著しい発達をみたのであるが,昭和期に入るや落網(おとしあみ)がこれに代わるところとなった。網漁業【秋田 俊一】。…

【定置網漁業】より

…定置網は文字通り一定の場所に長期間設置しておく網漁具で,建網類とも呼ばれる。定置網を用いて営む漁業が定置網漁業である。魚群の移動を遮断し誘導する垣網と,その魚群をとりあげるための身網(あるいは囊(ふくろ)網)とから成るのが基本的な構造である。魚群の来遊を待つ受動的な漁業であるので,設置場所の選定が重要である。沿岸に来遊する魚群が多く,多くの人手で大規模な漁具を用いていたころは沿岸漁業の中で重要な位置を占めたが,水産資源の減少,沿岸環境の悪化,他の漁業(巻網漁業や底引網漁業)の進歩につれて,定置網漁業の重要性は低下してきた。…

※「落網」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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