谷崎潤一郎の長編小説。1928年(昭和3)12月から翌年6月まで『東京日日新聞』『大阪毎日新聞』に連載。29年改造社刊。東京生まれの斯波要(しばかなめ)・美佐子夫妻は関西に移り住んで結婚後10余年、小学校4年の子供があるが、いまは名目だけの夫婦である。美佐子には2年ほど前から阿曽(あそ)という恋人ができ、毎日のように会いに行く。夫の要はそのことを知りつつ、混血のルイズという娼婦(しょうふ)のもとに通っている。2人とも、子供を傷つけないよう離婚する機会を待っているのだが、そんなある日、妻の父に誘われて文楽見物に出かけた要は、文楽の人形の小春のうちに「永遠女性」のおもかげをみいだし、また、義父の若い妾(めかけ)お久の関西的な伝統美の世界に惹(ひ)かれてゆく。モダニズムから古典回帰へと移行する時期の重要な作品。自伝的要素も濃く、この作が書かれて2年後、潤一郎は妻千代を友人の佐藤春夫に譲った。
[大久保典夫]
『『蓼喰う虫』(新潮文庫)』
顔や四肢に特有の紅斑がみられる疾患で,伝染性紅斑の俗称。パルボウイルスの感染によって年長幼児,低学年児童に好発し,乳児や成人には少ない。1〜2週間の潜伏期ののち突然発疹が出る。発疹は両ほおに対称的に生...