日本大百科全書(ニッポニカ) 「薄層クロマトグラフィー」の意味・わかりやすい解説
薄層クロマトグラフィー
はくそうくろまとぐらふぃー
thin layer chromatography
濾紙(ろし)クロマトグラフィーの濾紙のかわりに、ガラス板上に固着された吸着剤の微粉末の薄い層を用いるクロマトグラフィーをいう。吸着剤は、シリカゲル、アルミナ、セルロース粉末などが普通であるが、イオン交換樹脂やセファデックス(架橋デキストランの商品名)のようなものも特殊な目的に用いられる。シリカゲルは容量が大きく、吸着および分配の両クロマトグラフィーに有用であり、固定相の選択により、吸着、分配、イオン交換などの各種クロマトグラフィーが簡単に行える。
試料を薄層板の下端近くにスポットし、適当な溶媒によって展開させ、ペーパークロマトグラフィーと同様な検索を行うが、薄層の場合には、スポットの部分をかき取って抽出し定量することもできる。ペーパークロマトグラフィーに比べて検出感度や分離能に優れ、迅速かつ再現性がよいなどの長所があり、医薬品、抽出物、生化学的処理物質の確認、あるいは混合物の分離検出など、応用はきわめて広い。
[高田健夫]