吸着剤(読み)キュウチャクザイ(その他表記)adsorbent

翻訳|adsorbent

デジタル大辞泉 「吸着剤」の意味・読み・例文・類語

きゅうちゃく‐ざい〔キフチヤク‐〕【吸着剤】

表面に他の物質を吸着する性質の強い物質。活性炭活性アルミナシリカゲルなど。脱色脱臭・脱湿や、触媒化学分析などに利用吸着媒

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精選版 日本国語大辞典 「吸着剤」の意味・読み・例文・類語

きゅうちゃく‐ざいキフチャク‥【吸着剤】

  1. 〘 名詞 〙 表面積で大きく他物質を吸着する能力の強い物質。活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、酸化チタンイオン交換樹脂ベントナイト珪藻土(けいそうど)など各種がある。脱色、脱臭、脱湿、物質の回収、精製、触媒などに広く用いる。吸着媒。

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改訂新版 世界大百科事典 「吸着剤」の意味・わかりやすい解説

吸着剤 (きゅうちゃくざい)
adsorbent

固体表面上に,それに接する気体液体の中から特定の成分が選択的に集まる現象を吸着といい,吸着を生じさせる固体を吸着剤という。吸着される物質を吸着質というのに対して,吸着剤を吸着媒ということもある。

 吸着剤としての主要な必要条件は,表面積が大きいことで,固体の内部に微小細孔を数多く作り,結果的に数百~1500m2/gにも及ぶ内部表面積をもたせる。すなわち,いわゆる多孔質固体が用いられることとなる。多孔質固体としては,シリカ,アルミナ,炭素,金属酸化物などの無機系のものと,合成樹脂など有機系のものがある。

 吸着剤が選択的に吸着できる物質は,多孔質固体の細孔表面の性質と細孔の大きさによって決まる。細孔表面が親水性,すなわち極性の表面を有する吸着剤として,シリカゲル活性アルミナ,合成あるいは天然のゼオライト沸石)などがあり,この種のものは水分などのように極性の物質を吸着するのに優れている。また,疎水性の表面を有する吸着剤の代表としては活性炭があり,これは油分や有機物,たとえば溶剤蒸気や水の中の有機物,排煙中の亜硫酸ガスなどの吸着によく用いられる。油分の脱色精製には天然物から作られる活性白土などが用いられる。

 吸着能力を高めるためには表面積を大きくするのが有効であるが,このためには微小細孔の径は小さくなる。あまり小さくなると吸着される物質の分子径(サイズ)との兼合いで,分子のふるい分けが行われることとなる。すなわち,微小細孔の径より大きい分子径を有する物質は排除されて吸着されない。この現象を積極的に利用する分離操作もある。このような分子ふるい効果を有する吸着剤としては,合成ゼオライトであるモレキュラーシーブ,または活性炭系の分子ふるいカーボンなどが開発されている。

吸着はあくまでも非定常の現象であり,吸着平衡によって決まるある関係に到達すると,吸着剤はもはや吸着能力を失する。このような失活した吸着剤は,工業的には再生して繰り返し使用されることが多い。

 この再生方法としては,吸着平衡関係が温度によって大きく変化することを利用する加熱再生,すなわち高温の不活性ガスや水蒸気を通して吸着質を追い出す方法や,減圧真空にして吸着質を吸着剤表面から脱離させる方法などがある。このように,温度を上げたり,濃度や圧力を下げることにより吸着している物質が吸着剤表面から流体中へ移動していく現象およびその操作を脱着と呼ぶ。

 水処理に用いた活性炭の場合には吸着質が簡単に脱着するものが少ないので,熱再生としても800℃くらいの高温とし,吸着質を熱分解し,水蒸気などにより残留炭化物をガス化するなどの操作を必要とする。吸着質の種類によっては,化学薬品を流して吸着質の化学的性質を変えて脱着させる場合もあり,吸着した有価物の回収が可能である。
執筆者:

薬学の領域では,ケイ酸アルミニウムケイ酸マグネシウム,薬用炭(または活性炭)などの吸着剤が用いられる。吸着剤には次の二つの使われ方がある。(1)腸内の薬物,毒物,ガスなどを吸着させて,薬物による中毒の防止や予防,あるいは腸壁の保護などを目的として用いる。ケイ酸アルミニウムなどがこの目的で用いられる。(2)液状または粘着性物質もしくは含有水分を吸着させ,固形状とすることによって加工成形性(たとえば錠剤化)や取扱いやすさを高めるためのカオリンなどがある。
執筆者:

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病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「吸着剤」の解説

吸着剤

製品名
《ジメチコン製剤》
ガスコン(キッセイ薬品工業)
ガスサール(東和薬品、日医工)
ガステール(扶桑薬品工業)
ジメチコン(日本ジェネリック、陽進堂)
バリトゲン(伏見製薬所、伏見製薬)
バルギン(カイゲンファーマ)
バロス(堀井薬品工業)
ポリシロ(堀井薬品工業)
《天然ケイ酸アルミニウム製剤》
アドソルビン(第一三共)

 胃腸内に発生したガスを吸収する消泡作用と、それを排泄はいせつする下剤作用がある薬です。ジメチコン製剤は、胃腸内にガスがたまったために生じた腹部症状(腹部の膨満感、おなかがゴロゴロ鳴る腹鳴)、空気嚥下症くうきえんげしょうなどの改善に使用します。


 また、胃の検査時(内視鏡やX線検査)のガスの排除にも使用されています。


 アドソルビンは、下痢症の治療にも使用します。


 ジメチコン製剤では軟便、胃部の不快感、下痢、腹痛、嘔吐おうと、食欲不振といった症状を、天然ケイ酸アルミニウム製剤では便秘をおこすことがあります。


 こうした症状がおこったときは、医師に相談してください。


①各種の剤型があり、食後または食間の服用が原則です。服用量・服用時間・服用回数・服用期間については医師の指示を守り、かってに中止、減量・増量しないでください。


 また、服用するときは十分な水で飲んでください。


天然ケイ酸アルミニウム製剤は、人工透析を受けている人、腸閉塞、出血性大腸炎のある人は使用できません。また、便秘、腎障害、リン酸塩低下のある人は使用できないことがあります。


③ほかの病気の治療で薬を服用している人は、あらかじめその旨を医師に報告し、服用法などについて医師と相談してください。

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百科事典マイペディア 「吸着剤」の意味・わかりやすい解説

吸着剤【きゅうちゃくざい】

吸着能力の大きな物質。一般に体積に比べて表面積が非常に大きい多孔質の構造をした固体である。活性炭,活性白土,ケイ藻土,活性アルミナ,シリカゲル,モレキュラシーブ(合成ゼオライトを【か】焼(かしょう)して結晶水を除いたもの)など。液体や気体の脱色・脱臭,脱湿,物質の回収や精製,触媒の担体,化学分析などに利用。
→関連項目吸着脱色剤

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化学辞典 第2版 「吸着剤」の解説

吸着剤
キュウチャクザイ
adsorbent

気体または液体の吸着質を吸着する物質.吸着媒ともいう.化学吸着の場合は吸着質と吸着剤の間に特定の関係があるから,これを利用して吸着分離が可能である.シリカゲル,アルミナ,白土などは乾燥用吸着剤に使用され,活性炭は有害物質の除去などに利用される.イオン交換樹脂も一種の吸着剤である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「吸着剤」の解説

吸着剤

 物質を吸着する活性のある物質.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の吸着剤の言及

【界面化学】より

…一方,固体の表面では内部と異なる原子配列の不規則性があり,気体などの分子を吸着する。活性炭,シリカゲル,ゼオライトなどはとくに単位重量あたりの表面積(これを比表面積という)が大きく,吸着作用が著しいので,吸着剤として利用される。吸着された分子が化学的に活性となり化学反応をひき起こす場合には,その固体表面は触媒作用を示す。…

※「吸着剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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