酸化カルシウム(読み)さんかかるしうむ(英語表記)calcium oxide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

酸化カルシウム
さんかかるしうむ
calcium oxide

カルシウムと酸素の化合物。生石灰(せいせっかい)ともいう。天然の石灰石や炭酸カルシウムを約900℃以上で熱分解すると得られる。

  CaCO3―→CaO+CO2
 現在工業的にはほとんど重油を燃料とした立炉や回転炉が用いられる。低温で焼成したものは白色無定形の固体であるが、焼成温度が高くなると結晶性はよくなる。融解液から大きな結晶が得られる。Ca2+イオンとO2-イオンが塩化ナトリウム型の格子をつくっている。格子定数a=4.80Å、結合間隔Ca-O=2.40Å。無定形のものはきわめて活性で、水とは高熱を発して反応し、水酸化カルシウム消石灰)となる。これを消和slakingという。

  CaO+H2O=Ca(OH)2+15.2kcal
 また、二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを与える。融点の高いことから、溶鉱炉の内張りに用いられる。さらし粉カーバイドセメント、ガラスなどの原料となるほか、石灰肥料、土質安定剤、消毒剤、乾燥剤などとして多方面に使われている。

[鳥居泰男]


酸化カルシウム(データノート)
さんかかるしうむでーたのーと

酸化カルシウム
  CaO
 式量  56.1
 融点  2572℃
 沸点  2850℃
 比重  3.37
 結晶系 立方
 屈折率 (n) 1.837

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

酸化カルシウム
さんかカルシウム
calcium oxide

化学式 CaO 。石灰,生石灰ともいう。工業的には石灰岩を加熱して製造。通常白色ないし灰白色で,塊状または粒状の物質。融点 2572℃,沸点 2850℃,比重約 3.2。空気中では容易に水と二酸化炭素を吸収する。水に溶け,水酸化カルシウム Ca(OH)2 を生じ,同時に強く発熱する。グリセリン,砂糖溶液に可溶。煉瓦モルタル,しっくいなどの建材用原料,ガラス,紙,アンモニア・ソーダ法 (ソルベー法) による炭酸ソーダの製造,鉄鋼アルミニウムマグネシウムの精錬,各種カルシウム塩や工業化学製品の製造,ショ糖,ビート糖液の脱色,殺虫・殺菌剤,下水処理,炭酸ガス吸収剤などに使われ,用途は非常に多い。強アルカリ性物質で皮膚,粘膜をおかすので,粉末などを吸入することは危険。特に目に入ると,水分や蛋白質と発熱反応を起して糊状の塊をつくる。これを洗い落すことは普通の洗浄では非常にむずかしい。

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