日本大百科全書(ニッポニカ) 「薄膜トランジスタ」の意味・わかりやすい解説
薄膜トランジスタ
はくまくとらんじすた
thin film transistor
ガラス基板などの上に真空蒸着などの方法で形成した半導体薄膜を用いてつくられたトランジスタ。略してTFTともいう。薄膜トランジスタの最初の着想は、ドイツのリリエンフェルトJulius Edgar Lilienfeld(1882―1963)が1925年に出願した特許にあるといわれる。また、実験的には1961年にアメリカのワイマーPaul K. Weimer(1914―2005)が硫化カドミウムの蒸着膜を用いて試作した報告がある。これは絶縁ゲート型電界効果トランジスタであるが、実用化には成功していない。
実用化に成功したTFTは、1979年イギリスのダンディー大学グループによるアモルファスシリコンを用いたもの、同年日本の日立グループによるガラス基板上の低温ポリシリコンを用いたものが最初であり、薄型テレビ、携帯電話、デジタルカメラなどの画像表示に広く製品化されている。
1980年代以降、有機半導体、酸化物半導体を用いたTFTが提案されており、前記のシリコン系をしのぐ特性を得るための性能向上が続けられている。
[丸山瑛一]
『鵜飼育弘著『薄膜トランジスタ技術のすべて』(2007・工業調査会)』▽『薄膜材料デバイス研究会編『薄膜トランジスタ』(2008・コロナ社)』