硫化カドミウム(読み)りゅうかかどみうむ(英語表記)cadmium sulfide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化カドミウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カドミウム
りゅうかかどみうむ
cadmium sulfide

カドミウム硫化物。天然には硫カドミウム鉱として産する。硫酸カドミウム水溶液に硫化水素を通じて沈殿させるか、酸化カドミウム硫黄(いおう)の混合物を加熱すると得られる。黄色結晶性粉末。沈殿によってつくられた低温型は閃(せん)亜鉛鉱型構造、結合間隔Cd-S 2.52オングストローム、硫黄気流中で700~800℃に灼熱(しゃくねつ)した高温型は六方晶系のウルツ鉱型構造、結合間隔Cd-S 2.52オングストローム。水にほとんど不溶。熱希硝酸、熱硫酸に可溶、アンモニア水に難溶。黄色顔料としてカドミウムエローの名で広く絵の具に用いられる。そのほかガラス、繊維、紙、ゴム、印刷インキなどの着色料として用いられる。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化カドミウム」の意味・わかりやすい解説

硫化カドミウム
りゅうかカドミウム
cadmium sulfide

化学式 CdS 。天然には硫カドミウム鉱として産出する。鮮黄色ないし橙色の立方晶系あるいは六方晶系結晶。比重 4.82,980℃で昇華する。水に不溶,鉱酸に溶け硫化水素を発生する。光伝導性があり,可視から近赤外域の光に対して非常に大きな光導電効果を示す。この性質を利用して,焼結薄膜あるいは蒸着薄膜が光導電素子に用いられている。その他,蒸着薄膜を用いた薄膜太陽電池は人工衛星用として実用化されている。また,ケイ光体として知られ,黄色の顔料としても用いられる (→II-VI族化合物半導体 ) 。

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