薪(まき)(読み)まき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「薪(まき)」の意味・わかりやすい解説

薪(まき)
まき

「たきぎ」ともいう。燃料とする木材で、幹や枝の材を適宜の大きさに切り割って、しばらく時間をかけて乾燥させたもの。1、2年乾燥させるのが望ましいとされている。薪は立木(りゅうぼく)から調整した普通薪と、製材の残材から調整した製材薪に大別され、普通薪は広葉樹薪と針葉樹薪に分けられ、前者は樹種により細分される。ブナ科の樹種とくにナラ属のナラ類、カシ類、クヌギの薪は「堅薪(かたまき)」とよび、材質が硬く火もちが長い良質薪とされる。その他の広葉樹薪は「雑薪」で燃焼性が悪く価格も安い。針葉樹薪は「松薪」と総称され、火力が強く炎が長いので陶磁器製造用に需要がある。製材薪は廃材の背板や端切れ材などの薪で「ばた薪」といい、乾燥して火付きはよいが火もちは短い。

 薪の発熱量は樹種により差があるが、絶乾(ぜっかん)(絶対乾燥状態)の薪で1グラム当り平均4500カロリー程度で、針葉樹薪は広葉樹薪よりやや発熱量が多い。薪の水分が多いと発熱量が減るが、水分40~50%の生(なま)薪では2500カロリー程度である。薪が水分を吸収しないように、薪を加熱処理して乾燥させるとともに表面を炭化させたものが「燻(いぶり)薪」である。また廃材の鋸屑(のこくず)やチップ屑、樹皮屑を乾燥させ、高圧圧縮成形したのが「成形薪」で、鋸屑の成形薪はオガライト(商品名)とよばれ、取り扱いやすく燃焼性のよい新しい薪である。

 薪はもっとも簡便な燃料として人間の歴史とともに利用されてきた。日本でも木炭とともに家庭燃料として昭和30年代までは多く利用されてきた。最盛期では年間2000万立方メートル、木材の全需要量の28%が薪炭材であった(1957)が、その後の石油利用による燃料革命によって、薪炭材の需要はわずか42万立方メートル(1987)までに激減した。その後は多少増加して約109万立方メートル(2010)となっている。世界では、全木材生産量の55%、19億立方メートル(2010)が薪炭材として利用されている。

[蜂屋欣二・藤森隆郎]

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