改訂新版 世界大百科事典 「クヌギ」の意味・わかりやすい解説
クヌギ (櫟)
Japanese chestnut oak
Quercus acutissima Carruth.
里山の雑木林に最も普通にみられ,大きな丸いどんぐりをつけ,樹液に昆虫が多く集まるなど,なじみの深いブナ科の落葉高木。幹は直立し,樹皮は縦に細かく裂ける。やや太い枝に,細長い葉が互生し,先端部に特に集まるということはない。葉の側脈は多数で平行して走り,先端は葉の縁よりも突出する。托葉は早落性で,成葉は無毛である。花は4月ころ,葉よりやや早く開く。雌雄同株。雄花は新枝の下部や下位の芽から房になって垂れ下がり,雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)の短い柄に1~2個つく。どんぐりは丸く,直径約1.5cmで,殻斗には長く反り返った鱗片がある。どんぐりは2年で成熟するため,葉の茂みの下につく。本州(岩手県・秋田県以南),四国,九州,琉球,朝鮮,中国,台湾,インドシナ半島北部,ヒマラヤ南麓に広く分布する。薪炭材として広く利用された(特に佐倉炭など)。切株から萌芽する能力が高く,それを利用して薪炭林が維持されるため,本来の樹形とは異なり,基部から枝分れした形が多く見られる。材は器具,船舶,車両などに使われ,シイタケの榾木(ほたぎ)として最も普通に用いられる。樹皮や殻斗からタンニンをとり,染料や,なめし皮用とする。
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報