(上杉和彦)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
平安後期の歌人。父は従(じゅ)四位下式部少輔(しきぶのしょうふ)藤原能兼(よしかね)、母は高階為賢(たかしなのためたか)の女(むすめ)。従三位刑部卿(ぎょうぶきょう)に至り、岡崎三位と称された。東宮学士を務めた関係で、二条(にじょう)天皇近臣歌人の一人として活躍。長寛(ちょうかん)3年4月26日没。『和漢兼作集(わかんけんさくしゅう)』(書陵部本)に漢詩がみえ、和漢兼作の人であるが、和歌は実作より歌学者として優れており、『和歌童蒙抄(どうもうしょう)』『五代集歌枕(うたまくら)』『後六々撰(のちのろくろくせん)』の編著書がある。『千載集(せんざいしゅう)』以下に入集(にっしゅう)。
月まつと人にはいひてながむればなぐさめがたきゆふぐれのそら
[川上新一郎]
…《能因歌枕》はその例で,地名を含めた歌言葉一般の集成である。時代が下がると,藤原範兼(1107‐65)著の《五代集歌枕》のように五代の集(《万葉集》および《後拾遺集》までの4勅撰和歌集)から地名を引き出し,証歌を掲げたものが現れる。ここでは歌枕は由緒ある地名の意味で用いられている。…
… またこの時代には和歌の学問がさかんになって,古歌の語が研究されるようになり,多くの歌論書が作られた。その中で,能因法師の《能因歌枕(うたまくら)》1巻,藤原仲実(なかざね)の《綺語(きご)抄》3巻,藤原清輔(きよすけ)の《奥儀(おうぎ)抄》3巻(天治~天養期(1124‐45)ころ成立),顕昭の《袖中(しゆうちゆう)抄》20巻(文治期(1185‐90)ころ成立),藤原範兼(のりかね)の《和歌童蒙(どうもう)抄》10巻(1135‐55(保延1‐久寿2)の間に成立)などの中には,歌語を集めて意味分類をし,それに解釈を加えた部分が含まれている。
[鎌倉・室町時代]
平安時代の辞書の影響を受けながら,多くの辞書が新しく編まれた。…
※「藤原範兼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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