私撰集(読み)しせんしゅう

  • しせんしゅう ‥シフ
  • しせんしゅう〔シフ〕
  • 私×撰集

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

歌集の分類名の一つ。個人が私的な立場で多くの歌人の歌を集めたもの。総合的な撰集であることにより私家集に対し,私的であることによって勅撰和歌集に対するが,勅撰集と考えられていた藤原公任 (きんとう) の『拾遺抄』,二条天皇の死によって勅撰集となりえなかった藤原清輔 (きよすけ) の『続詞花集』,準勅撰集となった宗良 (むねなが) 親王の『新葉和歌集』などもあり,かなりの幅がある。すでに『万葉集』に山上憶良 (おくら) の『類聚歌林』の名がみえるが,平安時代に入って和歌漢詩を添えた菅原道真の『新撰万葉集』が現れた。形態や内容は多様で,勅撰集の部立にならった紀貫之の『新撰和歌集』や衣笠家良撰といわれる『万代集』,類題和歌集である『古今和歌六帖』や藤原長清の『夫木和歌抄』,作者別に歌を収めた能因の『玄々集』などがあり,賀茂神社や伊勢神宮にちなんだ賀茂重保の『月詣 (つきもうで) 集』や寂延の『御裳濯 (みもすそ) 集』,醍醐寺のの歌を収めた『続門葉集』などもある。また,『詞花和歌集』を難じるためにつくられた藤原為経 (ためつね) の『後葉集』のようなものもある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

勅撰でない撰集(多くの作者の漢詩もしくは和歌、連歌(れんが)あるいは俳諧(はいかい)などを集めたもの)の称。近世以降の撰集はほとんどすべて私撰であるが、とくに私撰集とよぶのは、多くは中古・中世(平安~室町時代)の私撰和歌集(当時の用語で「打聞(うちぎき)」)である。『万葉集』やそこに引かれている『古歌集』『類聚歌林(るいじゅうかりん)』など、また近世以降の各一門・結社などの集も重要であるが、和歌史的に注意されるのは、一方に勅撰集もあったこの時代に成ったからである。

 それらのなかには散逸したものも多く、規模も種々であるが、形態的には(1)『新葉集』などのように勅撰集に近い(四季恋雑に部類する)もの、(2)『古今和歌六帖(ろくじょう)』のような類題集、(3)『新撰和歌』『人家集(じんかしゅう)』その他のようにそれぞれ特殊な形のもの、と分けることもできる。一方成立事情によって分類すれば、(1)勅撰集となるはずのところ下命者の死で勅撰集とならなかったもの(『新撰和歌』『続詞花集(しょくしかしゅう)』など)、(2)なんらかの点で勅撰集に異をたて、あるいは対抗したもの(『万代集(まんだいしゅう)』『新葉集』など)、(3)勅撰集のなくなった室町中期以後の集(『類字名所和歌集』など)、(4)特殊なものとして物語中の歌を集めた『風葉集』、とすることもでき、(2)(3)には特定の地域、寺社、氏族、党派などの集や、類題集、名所和歌集などもあって、甚だ多種である。その多くは撰定の動機や意図が和歌史の反映として興味あるうえに、他に伝わらない歌を含む点でも有用である。なお、『三十六人撰』『小倉(おぐら)百人一首』のような秀歌撰や『時代不同歌合(うたあわせ)』など一部の撰歌合(せんかあわせ)は私撰集に準じて扱うこともできる。また『新葉集』『菟玖波集(つくばしゅう)』のように成立後に勅撰に準ずるとの綸旨(りんじ)を賜ったもの(準勅撰集)もある。

[福田秀一]

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