改訂新版 世界大百科事典 「血色素尿症」の意味・わかりやすい解説
血色素尿症 (けっしきそにょうしょう)
hemoglobinuria
尿にヘモグロビン(血色素)が混じっている状態。血管内で赤血球の破壊(溶血)があって血中にヘモグロビンが遊離し,これが腎臓の糸球体を通過して尿中に出てくるものである。尿に赤血球が混じっている状態を〈血尿〉というが,これと血色素尿とは異なる。血色素尿では尿の色が茶~黒褐色を呈することが多い。溶血性貧血のうち発作性夜間血色素尿症,発作性寒冷血色素尿症,寒冷凝集素病,グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症,赤血球破砕症候群,あるいはマラリアや敗血症などの病気のときに見られる。発作性夜間血色素尿症では早朝排泄尿が,発作性寒冷血色素尿症や寒冷凝集素病では身体の一部が寒冷にさらされたのち,グルコース-6-リン酸脱水素酵素欠乏症ではマラリア治療剤,解熱剤,サルファ剤など酸化作用のある薬剤服用後に生ずる。赤血球破砕症候群ではたとえば剣道の踏込み稽古や空手の練習後などに生ずる。これは足の裏や手の甲などを反復して硬い床などに打ちつけることによって,血管内の赤血球がこわれるためにおこる。
執筆者:三輪 史朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報