精選版 日本国語大辞典 「行ない」の意味・読み・例文・類語
いけ【行】 ない
- ( 動詞「いける(行)」の未然形に打消の助動詞「ない」の付いたもの。現在では一語的に用いる ) よくない。望ましくない。許されない。だめだ。いかん。いけぬ。いけん。
- ① ( 非難めいた気持をこめて ) わるい。よくない。多く連体修飾語として用いる。また、親愛の気持からいう場合もある。
- [初出の実例]「こりゃまたなんのことだ いけなひけづり廻しめ」(出典:談義本・当世花街談義(1754)二)
- ② ( 困惑の気持をこめて ) 物事がうまくできない。具合が悪い。困る。文頭に来て感動詞的にも用いる。しまった。
- [初出の実例]「アレ兄さんいやだよ。髪がよごれるはね、いけないヨ」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後)
- ③ 先の望みがない。よくなる見込みがない。だめである。
- ④ ( 多く「…てはいけない」「…なければいけない」の形、または、単独の形で ) 禁止の意を表わす。
- [初出の実例]「そんな心ぼそいことを、おいひなさっちゃアいけないはねへ」(出典:人情本・春色恵の花(1836)二)
- ⑤ ( 同情の気持をこめて ) 気の毒だ。
- [初出の実例]「お嘔(もど)しなさった…それはいけない」(出典:或る女(1919)〈有島武郎〉前)
行ないの補助注記
丁寧な表現の場合は「いけません(いけませぬ)」となる。「中の町までお出(いで)なさらねへぢゃァいけませんネ」〔人情本・春色恵の花‐二〕、「如何(どの)やうに口上がよくとも、する事が悪ければやはり不好(イケマセヌ)」〔伊蘇普物語〈渡部温訳〉三二〕など。