日本大百科全書(ニッポニカ) 「行表」の意味・わかりやすい解説
行表
ぎょうひょう
(724―797)
奈良時代の三論宗の僧。大安寺の学僧。大和(やまと)(奈良県)の葛城上(かつらぎのかみ)郡高宮に生まれ、741年(天平13)勅により唐僧の道璿(どうせん)について得度(とくど)、師より興福寺北倉院で受戒した。律、禅、法相(ほっそう)、華厳(けごん)などを学び、近江(おうみ)国(滋賀県)崇福寺(すうふくじ)寺主となり、のち近江国師、伝燈(でんとう)大法師位に任ぜられた。日本天台宗開祖の最澄(さいちょう)は近江国分寺で行表により出家し、禅の血脈(けちみゃく)の師となすが、道璿、行表の天台学の素養が立宗に強い影響を与えたものと考えられる。行表は晩年、道璿が751年(天平勝宝3)退居した大和の比蘇山寺(ひそさんじ)に隠棲(いんせい)、修禅の生活を送った。
[塩入良道 2017年6月20日]