得度(読み)トクド

デジタル大辞泉 「得度」の意味・読み・例文・類語

とく‐ど【得度】

[名](スル)《「度」は、梵pāramitā(波羅蜜はらみつ音写)の訳》
生死苦海を渡って涅槃ねはん彼岸に至ること。
出家して僧や尼になること。「幼くして得度する」

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精選版 日本国語大辞典 「得度」の意味・読み・例文・類語

とく‐ど【得度】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。
  2. ( 「度」は波羅蜜のこと ) 生死の苦海を渡って涅槃の彼岸に達すること。→到彼岸
    1. [初出の実例]「経云、応以波羅門身得度者、即現婆羅門身、而為説法是也」(出典:南天竺波羅門僧正碑并序‐神護景雲四年(770)四月二一日)
    2. [その他の文献]〔白居易‐唐撫州景雲寺故律六徳上宏和尚石塔碑銘〕
  3. 剃髪して出家具戒すること。僧侶になること。古くは僧・尼となることを国家から許可されることによって出家となった。天平六年(七三四)には、師について浄行三年の後に法華経・最勝王経の暗誦に通じる者を許可したが、延暦一七年(七九八)になって、経論の大義十条を試みて、五条以上に通じる者を許した。得度した者には政府から証書を与えた。これを告牒・度縁・度牒・公験といい、課役を免除された。
    1. [初出の実例]「土百姓、浮浪四方、規避課、遂仕王臣、或望資人、或求得度」(出典:続日本紀‐養老元年(717)五月丙辰)

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改訂新版 世界大百科事典 「得度」の意味・わかりやすい解説

得度 (とくど)

得度とは救う,度を渡る,すなわち迷いの世界から悟りの彼岸に渡る意味と,悟りを得るといった意味のほかに,在俗者が仏門に入ることを意味する。今日では僧となること,出家する意味に用いられる場合が多い。得度者は略して度者(どしや),度人ともいわれ,官許によるものと,ひそかに出家する私度僧に分けられる。官許の得度には,官大寺などに年間数人ずつ得度させる年分度者(ねんぶんどしや)の制度のほかに,天変地異や天皇貴族の病気全快や追善のために臨時に数人,あるいは多数の男女を得度させる場合があった。仏教隆昌徴税の厳しさにたえかねて私度僧が群出したため,僧尼の質の向上を計って734年(天平6)11月,804年(延暦23)5月,806年(大同1)1月に厳しい条件が付せられた。律令制度崩壊とともに形骸化するにいたったが,中世以降は各宗本山,あるいは各寺で形式的に行われている。
度牒
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「得度」の意味・わかりやすい解説

得度
とくど

迷いの世界を超えて悟りの世界に渡りうること。度とは、サンスクリット語のターラヤティtārayatiの訳語で、渡ることである。なお、これより転じて、在家者が剃髪(ていはつ)し、出家して僧となることをいう。『四分律(しぶんりつ)』巻32によれば、インドでは、父母の許しがあれば出家できたが、12歳未満者は得度できない。得度のとき受ける戒律は、五戒(不殺生(ふせっしょう)、不偸盗(ふちゅうとう)、不邪婬(ふじゃいん)、不妄語(ふもうご)、不飲酒(ふおんしゅ))を保つことで、20歳になると、比丘(びく)は二五〇戒、比丘尼は三四八戒を保つ具足戒(ぐそくかい)を受けた。中国では、得度しただけの者は沙弥(しゃみ)といい、具足戒を受けて僧となった者とは区別された。日本では、得度しただけで僧といわれるが、また上座(じょうざ)ともいわれる。律令(りつりょう)制では、得度して僧尼になるには官許を必要とし、かってに得度したものを自度、私度と称した。

[川口高風]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「得度」の解説

得度
とくど

仏門に入り,僧尼としての資格を得ること。優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)が沙弥(しゃみ)・沙弥尼(しゃみに)となる過程をいう。古代律令制下では,得度権は教団ではなく国家が掌握し,国家の発給する度牒(どちょう)(度縁(どえん))を公験(くげん)として正規の僧尼であることが認められ,免課役などの特権を得た。古代の得度には,年に各国10人の僧尼を度す年分度(ねんぶんど)や,不定期に必要に応じて許可する臨時度などの得度があったが,一方官許を得ずに勝手に仏門に入ることを私度(しど)(自度)と称し,国家の禁圧するところとなった。

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百科事典マイペディア 「得度」の意味・わかりやすい解説

得度【とくど】

度は波羅蜜(はらみつ)の漢訳語で,得度とは元来,涅槃(ねはん)の彼岸に渡ることを意味した。転じて出家して僧尼となること。中国・日本では得度には官許を必要とし,勝手に得度した僧を自度僧・私度僧などと呼んだ。江戸時代以後,得度は各宗の権限と監督にゆだねられた。
→関連項目田中智学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「得度」の意味・わかりやすい解説

得度
とくど

剃髪出家すること。度はサンスクリット語の pāramitā (波羅蜜) の訳で,本来は悟りの世界に渡ることを意味した。中国,日本では得度して僧となるには官許を必要とし,勝手に得度したものを自度,私度といった。江戸時代以後,得度は諸宗の権限にまかされた。 (→度牒 )

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普及版 字通 「得度」の読み・字形・画数・意味

【得度】とくど

出家する。

字通「得」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の得度の言及

【僧】より

…【高崎 直道】
[中国]
 もともと4人以上の出家者の集団を指したが,中国では1人でも僧といい,また仏教徒の総称としても用いられる。厳密には,得度した者が僧,具足戒を受けた者は大僧,出家して得度にいたらぬ有髪の修行者は童行,行者といった。僧は別に比丘,桑門,沙門,和尚,道人などさまざまによばれる。…

【度牒】より

…出家得度の証として政府が交付する証明書。度縁ともいう。…

※「得度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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