得度とは救う,度を渡る,すなわち迷いの世界から悟りの彼岸に渡る意味と,悟りを得るといった意味のほかに,在俗者が仏門に入ることを意味する。今日では僧となること,出家する意味に用いられる場合が多い。得度者は略して度者(どしや),度人ともいわれ,官許によるものと,ひそかに出家する私度僧に分けられる。官許の得度には,官大寺などに年間数人ずつ得度させる年分度者(ねんぶんどしや)の制度のほかに,天変地異や天皇貴族の病気全快や追善のために臨時に数人,あるいは多数の男女を得度させる場合があった。仏教の隆昌と徴税の厳しさにたえかねて私度僧が群出したため,僧尼の質の向上を計って734年(天平6)11月,804年(延暦23)5月,806年(大同1)1月に厳しい条件が付せられた。律令制度の崩壊とともに形骸化するにいたったが,中世以降は各宗本山,あるいは各寺で形式的に行われている。
→度牒
執筆者:堀池 春峰
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迷いの世界を超えて悟りの世界に渡りうること。度とは、サンスクリット語のターラヤティtārayatiの訳語で、渡ることである。なお、これより転じて、在家者が剃髪(ていはつ)し、出家して僧となることをいう。『四分律(しぶんりつ)』巻32によれば、インドでは、父母の許しがあれば出家できたが、12歳未満者は得度できない。得度のとき受ける戒律は、五戒(不殺生(ふせっしょう)、不偸盗(ふちゅうとう)、不邪婬(ふじゃいん)、不妄語(ふもうご)、不飲酒(ふおんしゅ))を保つことで、20歳になると、比丘(びく)は二五〇戒、比丘尼は三四八戒を保つ具足戒(ぐそくかい)を受けた。中国では、得度しただけの者は沙弥(しゃみ)といい、具足戒を受けて僧となった者とは区別された。日本では、得度しただけで僧といわれるが、また上座(じょうざ)ともいわれる。律令(りつりょう)制では、得度して僧尼になるには官許を必要とし、かってに得度したものを自度、私度と称した。
[川口高風]
仏門に入り,僧尼としての資格を得ること。優婆塞(うばそく)・優婆夷(うばい)が沙弥(しゃみ)・沙弥尼(しゃみに)となる過程をいう。古代律令制下では,得度権は教団ではなく国家が掌握し,国家の発給する度牒(どちょう)(度縁(どえん))を公験(くげん)として正規の僧尼であることが認められ,免課役などの特権を得た。古代の得度には,年に各国10人の僧尼を度す年分度(ねんぶんど)や,不定期に必要に応じて許可する臨時度などの得度があったが,一方官許を得ずに勝手に仏門に入ることを私度(しど)(自度)と称し,国家の禁圧するところとなった。
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…【高崎 直道】
[中国]
もともと4人以上の出家者の集団を指したが,中国では1人でも僧といい,また仏教徒の総称としても用いられる。厳密には,得度した者が僧,具足戒を受けた者は大僧,出家して得度にいたらぬ有髪の修行者は童行,行者といった。僧は別に比丘,桑門,沙門,和尚,道人などさまざまによばれる。…
…出家得度の証として政府が交付する証明書。度縁ともいう。…
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