衒示的消費(読み)げんじてきしょうひ(その他表記)conspicuous consumption

改訂新版 世界大百科事典 「衒示的消費」の意味・わかりやすい解説

衒示的消費 (げんじてきしょうひ)
conspicuous consumption

〈目立つための消費〉という意味であり,誇示的消費とも訳す。その最も単純な場合がostentatious consumption,つまり〈見せびらかすための消費〉である。たとえば,きわめて高価な商品を社会的威信をうるために消費するような現象がそれにあたる。T.ベブレンが《有閑階級の理論》(1899)でこうした種類の消費を論じたことにちなみ,〈ベブレン効果Veblen effect〉とも呼ばれる。ベブレンによれば,上層階級は生活維持のための労働を免れており,政治,軍事宗教,スポーツあるいは学問などの活動にもっぱら従事する。このような活動においては,多くの場合,金銭や物財や儀式一種の聖性が与えられているために,並みはずれた富の所有や浪費によって社会的名声を維持したり拡大したりすることができ,また下層階級もしだいにそうした活動を模倣するようになる,と彼は考えた。形式的には,たとえば,商品の価格を効用の規定因とみなすというような形でベブレン効果を処理することもできようが,彼の本来の趣意にそえば,重要なのはむしろ,この効果をどう解釈するかということであろう。つまり,経済活動の意味を象徴論的に解釈するということである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の衒示的消費の言及

【ベブレン】より

…ベブレンの主張のうちで最も重要なものは本能instinctと制度institutionの二元論である。たとえば,製作者本能workmanshipという正価値をもった本能が,衒示(げんじ)的消費conspicuous consumptionという負価値をもった制度と対比させられるのである。彼にとって文明の制度は,未開状態にみられたはずの人間の善なる性質を堕落させるという意味で,野蛮なものであった。…

※「衒示的消費」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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