表面分析(読み)ひょうめんぶんせき(その他表記)surface analysis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「表面分析」の意味・わかりやすい解説

表面分析
ひょうめんぶんせき
surface analysis

固体表面の幾何学構造(表面原子配列や欠陥)や表面原子の状態(原子組成、結合状態その他)、または固体表面に吸着した化学種に関する諸現象を解析したり、定性、定量を行う方法の総称。表面に電子、イオン、光、中性原子などを衝突させ、これらの諸粒子が表面との相互作用をおこした際の諸現象を検知、観察する方法が多く、また、熱や電場なども利用されている。たとえば、散乱吸収透過、イオン化、その他あらゆる現象が利用されている。衝突させる粒子の種類やエネルギーによって、相互作用のおこり方や相互作用をおこす表面からの深さが異なるので、表面第一層のみか、表面から数層までか、あるいは内部までを含んだ情報かが測定手段によって異なる。

 表面分析では、分析対象があるがままの状態で測定できることが理想であり、化学的手段はほとんど利用できず、また、一つの手段だけでなく、同時に複数の手段で情報を求めることが多い。光を当てて固体から発生する電子のエネルギーから解析する光電子分光法、電子衝撃による電子線回折法やオージェ電子分光法、イオン衝撃によるイオン散乱法や二次イオン質量分析法など数多くの方法がある。表面に関する情報の重要さが増すとともに、種々の表面分析機器が開発され、これらの機器が素材管理やプロセス技術のなかに組み込まれるようにまでなっている。とくに半導体工業の分野では欠かせない機器の一つである。

[高田健夫]

『染野檀・安盛岩雄編『表面分析――IMA、オージェ電子・光電子分光の応用』(1976・講談社)』『鎌田仁編『最新の鉄鋼状態分析』(1979・アグネ)』『D・ブリッグス、M・P・シーア編、表面分析研究会訳、合志陽一・志水隆一監訳『表面分析――基礎と応用』上下(1990・アグネ承風社)』『大西孝治・堀池靖浩・吉原一紘編『固体表面分析』1、2(1995・講談社)』『D・ブリッグス、M・P・シーア編、志水隆一・二瓶好正監訳『表面分析 SIMS――二次イオン質量分析法の基礎と応用』(2003・アグネ承風社)』『吉原一紘著『入門 表面分析――固体表面を理解するための』(2003・内田老鶴圃)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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