日本大百科全書(ニッポニカ) 「裸祭り」の意味・わかりやすい解説
裸祭り
はだかまつり
祭りのときに氏子など多数の人が裸になって、もみ合うことを特色とする祭りの俗称。とくに裸祭りという名称をもたなくても、同類の祭りは数多くある。著名なものには、岩手県奥州(おうしゅう)市水沢(みずさわ)区黒石(くろいし)町の黒石寺(こくせきじ)で旧暦1月7日の夜から翌朝にかけて行われる蘇民(そみん)祭、福島県柳津(やないづ)町の円蔵寺で旧暦1月7日の裸参り、千葉県成田(なりた)市の須賀(すが)神社で7月19日(もと旧暦6月19日)に行われる祇園(ぎおん)祭、新潟県南魚沼市浦佐の裸押合大祭(はだかおしあいたいさい)は、いまは3月3日であるがもとは旧暦1月3日であった。愛知県稲沢(いなざわ)市の尾張大国霊(おわりおおくにたま)神社(国府宮(こうのみや))の儺追(なおい)神事(旧暦1月13日)、京都市伏見(ふしみ)区日野の法界寺の修正会(しゅしょうえ)は1月1日から2週間で、結願(けちがん)の夜に裸踊りがある。奈良県桜井市初瀬(はせ)の長谷(はせ)寺で1月9日の仏名会(ぶつみょうえ)に裸詣(まい)りがある。岡山市東区西大寺の西大寺で行われる修正会結願の行事は、2月の第3土曜日で会陽(えよう)とよばれ、近隣に同名同趣の行事が多い。正月3日福岡市東区箱崎の筥崎宮(はこざきぐう)の玉取祭(玉せせりともいう)も裸祭りである。裸祭りには正月に行われるものと、夏祭の神幸に伴うものとがある。禊(みそぎ)の意味が強く表れているが、俗から聖への転換儀礼とみることもできる。
[井之口章次]