西鶴諸国ばなし(読み)サイカクショコクバナシ

デジタル大辞泉 「西鶴諸国ばなし」の意味・読み・例文・類語

さいかくしょこくばなし【西鶴諸国ばなし】

浮世草子。5巻。井原西鶴作。貞享2年(1685)刊。諸国の怪奇談など35話を集めたもの。近年諸国咄大下馬おおげば

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西鶴諸国ばなし」の意味・わかりやすい解説

西鶴諸国ばなし
さいかくしょこくばなし

井原西鶴の浮世草子。1685年(貞享2)1月、大坂・池田屋三郎右衛門より刊行。5巻5冊。自序に、「世間の広き事国々を見めぐりてはなしの種を求め」たとあるように、諸国の珍譚(ちんたん)奇譚を集め、「人はばけもの世にない物はなし」との感慨を込めた新時代の説話35編よりなる。『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)続集』(唐の段成式編)による巻2の4や、『剪灯新話(せんとうしんわ)』(明(みん)の瞿佑(くゆう)編)の『牡丹(ぼたん)燈記』を翻案した浅井了意(りょうい)の『伽婢子(おとぎぼうこ)』(1666刊)を受ける巻3の4のような怪異譚のほかに、巻2の2は紀州藩主徳川頼宣(よりのぶ)の逸話を扱い、巻1の3や巻4の2などは転変たる人間の運命を描いて優れた短編小説となっている。広く一般の読者を意識して商業作家としてたとうとした西鶴の姿を示す注目すべき作品である。

浅野 晃]

『宗政五十緒他校注・訳『日本古典文学全集39 井原西鶴集 2』(1973・小学館)』『麻生磯次・冨士昭雄訳注『対訳西鶴全集5 西鶴諸國ばなし・懷硯』(1983・明治書院)』

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