中国,晩唐時代,段成式(803?-863)の異聞雑記集。前集20巻,後集10巻。段氏は唐代の名家で,父の段文昌は穆宗(ぼくそう)の宰相をつとめた。この書は,段成式自身の見聞を核とし,さまざまな異聞や博物的知識を集大成して成る。その範囲は,中国知識人の正統的な知識のほか,道教や仏教に及び,地域的にはインドやペルシアまで含む。〈雑俎〉と名付けられているように〈ごった煮〉的な内容で,強い主張をもった作品ではないが,特に〈諾皐(だくこう)記〉〈支諾皐〉などの編は,唐末社会の中での説話のあり方を知るためにも重要である。シンデレラ型の物語が,年代的には世界で最も古くこの書物に見えることでも有名。
執筆者:小南 一郎
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中国、唐代の随筆。段成式(だんせいしき)著。前集20巻、続集10巻。860年ごろ成立。書名は湖南の小酉山の下に、1000巻の書を隠した穴があるという伝説による。宰相で蔵書家であった父をもち、宮中の図書係である校書郎の職について、無類の読書家であった著者が、その該博な知識を駆使して、奇事異談から衣食風習、医学、宗教、動植物に至るまで、世事万端についての見聞、考証を記したもの。なかには非現実的な記事も見受けられ、前集にある「盗侠篇(へん)」などはほとんど小説といえる内容も含むが、多くは唐代の社会風俗を知るための貴重な記録である。
[今西凱夫]
『今村与志雄訳注『酉陽雑俎』全五巻(平凡社・東洋文庫)』
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…厳密には,婚姻譚を含む後半部に共通点を見いだすというべきである。継子いじめ譚最古の文献《酉陽雑俎》に描かれる葉限と継母の対立抗争は,この話型に似通うものである。《住吉物語》《落窪物語》も同系統である。…
※「酉陽雑俎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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