覆刻本(読み)ふっこくぼん

精選版 日本国語大辞典 「覆刻本」の意味・読み・例文・類語

ふっこく‐ぼんフクコク‥【覆刻本・復刻本・複刻本】

  1. 〘 名詞 〙 覆刻(ふっこく)のようにして再製した本。
    1. [初出の実例]「インキの油の湿出した機械刷の複刻本は」(出典:読書放浪(1933)〈内田魯庵〉銀座と築地の憶出)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「覆刻本」の意味・わかりやすい解説

覆刻本
ふっこくぼん

既刊の版本、または既刊の版本を敷き写しにした本を、裏返して版木に貼(は)り付け、原本どおりの文字の形に彫刻、印刷した本。この方法をかぶせぼりといい、版本の再製方法の一種である。類似の再製方法に、敷き写しによる影写本や、近代写真製版による影印(えいいん)本がある。覆刻本は影写本に比して多量生産が可能であるのみならず、新しい版下書きを要せず、簡便であるから、古くから盛んに行われ、中国では宋(そう)代、わが国では鎌倉時代にすでにその例がある。鎌倉時代から江戸末期までの間に、中国から輸入された唐本が多数覆刻されて、わが国の学術や印刷文化の向上に大きく寄与した。また、江戸初期には古活字版を覆刻した整版本が多数出版されて流布した。覆刻本はおおむねきわめて精密に、原本どおりの文字の形に彫刻されるから、しばしば原本と見誤られ、混同されることがある。原本を得がたい場合、それにかわるものとして資料価値が高い。なお一般に、復刻本、複刻本と記して、既刊の図書を影印したものの総称としても用いられる。

[福井 保]

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