覆審(読み)フクシン

精選版 日本国語大辞典 「覆審」の意味・読み・例文・類語

ふく‐しん【覆審】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 同一の事件について再び調べなおすこと。繰り返し調べること。また、下級の官で決裁した事件を上級の官が再び審査すること。覆検。
    1. [初出の実例]「遣使覆審犯状軽重」(出典:続日本紀‐天平三年(731)一一月辛酉)
    2. [その他の文献]〔書経疏‐呂刑〕
  3. ふっかん(覆勘)
    1. [初出の実例]「令依辞状覆審」(出典:東寺百合文書‐へ・延喜一二年(912)七月一七日・七条令解)
  4. 上級審の裁判所が下級審の裁判とは無関係にあたらしく審理を開始し、事件についてみずから判断を下すこと。また、その審級。事後審・続審に対するもの。旧刑事訴訟法は控訴審を覆審としていたが、現行刑事訴訟法ではこれを事後審とした。
    1. [初出の実例]「覆審に因て明白にすることを得べし」(出典:明六雑誌‐一〇号(1874)拷問論・二〈津田真道〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の覆審の言及

【控訴】より

…証拠調べも,当然に行われるわけではない。これらの違いをとらえて,多くの学説は,旧法の控訴審は第一審と同じ手続を繰り返す覆審であったが,現行法では原判決の当否を審査する事後審になったと説明している。 現行法では,原則としてすべての第一審判決に対して控訴を申し立てることができるが,例外的に高等裁判所が第一審として裁判する事件(内乱罪など)では,控訴が許されない(刑事訴訟法372条)。…

【上訴】より

…ただし,遅延から生じる困難を避けるために,かりに執行されることもある(仮執行宣言)。上訴審の手続のあり方には,原審と同様の審判手続を繰り返す覆審,原審の弁論を引き継いで事件につき審判する続審,そして事件そのものについて判断するのではなく原裁判に誤りがあるかどうかだけを審査する事後審の3種があり,現行法では,上告審と刑事の控訴審は事後審であり,民事の控訴審は続審であると説明されることが多い。もっとも,このような類型によって上訴審の手続のすべてが決まるわけではない。…

※「覆審」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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