覆勘(読み)ふっかん

精選版 日本国語大辞典 「覆勘」の意味・読み・例文・類語

ふっ‐かん フク‥【覆勘】

〘名〙 審査を加えて、保証する意。
① 平安時代、解(げ)・売券など役所に提出される文書の記載について、刀禰・郡司・別当などの現地係官が審査を加えて保証すること。覆審。ふかん。
※薬師院文書‐弘仁七年(816)一一月二一日・雄豊王家地相博券文「依法欲券文立者、依申状、刀禰等覆勘、所陳有実」
② 鎌倉時代、京都大番役・異国警固番の勤務終了事実について審査を加え保証すること。勤務者の国の守護などが発行する覆勘状によってこれを証した。
中世再審手続判決に不服ある時、訴訟当事者が引付頭人方(裁判所)に申請し、理由が認められた時、再び審理を行なうこと。
沙汰未練書(14C初)「覆勘事 〈略〉訴論人の中に、先御沙汰参差之由、〈参差とは違目なり〉於頭人方子細之時、所申有其謂者、於本引付、以先御下知、重有其沙汰〈是を覆勘と云〉」
父祖の代に出訴しなかった事件を、孫の代になって出訴すること。
※庭訓往来註(室町中‐後)八月七日「覆勘、父祖代不沙汰、今孫代申也」
⑤ 平安時代、御書所および内御書所(うちのごしょどころ)の属官。
小右記‐永観二年(984)一二月八日「於御前申内御書所事、〈略〉可彼所学生十二人、此中有大内記保胤朝臣、是覆勘」
⑥ 文書の記載内容を点検すること。
※東大寺続要録(1281‐1300頃)宝蔵篇「依一日之覆勘

ふ‐かん【覆勘】

〘名〙 =ふっかん(覆勘)色葉字類抄(1177‐81)〕

ふく‐かん【覆勘】

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「覆勘」の解説

覆勘
ふっかん

鎌倉幕府訴訟制度の一つで,再審手続をいう。「沙汰未練書」によれば,判決後に訴人あるいは論人が,原判決誤謬があるとして引付頭人(ひきつけとうにん)に異議を申し立て,それが認められた場合に限り,原判決を下した引付で再審が開始される。なお再審が決定されなかった場合,さらに越訴(おっそ)することも可能であった。

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普及版 字通 「覆勘」の読み・字形・画数・意味

【覆勘】ふくかん

覆核

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