視力回復手術(読み)しりょくかいふくしゅじゅつ

百科事典マイペディア 「視力回復手術」の意味・わかりやすい解説

視力回復手術【しりょくかいふくしゅじゅつ】

角膜の形を変えることによって近視を矯正する手術で,次のような技法がある。(1)RK(Radial Keratotomy) 1972年にソ連(当時)のフィヨドロフ博士が開発した方法で,現在行われている視力回復手術のうちもっとも歴史が長い。軽度から中程度の近視および乱視の矯正のために行われ,メスで角膜を放射状に切開することで,屈折異常を直す。(2)PRK(Photo Refractive Keratectomy) 1988年に米国で始まったレーザー手術で,1995年に食品医薬品局(FDA)が近視の治療法として承認した。北米やヨーロッパ,アジアなど世界で30万人以上がこの手法で視力を回復している。ごく短い波長のレーザーを角膜に照射して形状を変えることで屈折異常を矯正するもので,中・強度の近視への効果が高く,遠視にも適用できる。(3)LASIK(Laser in-situ Keratomileusis) レーザーと角膜切除を組み合わせた方法で,1991年に始まった。角膜上皮をはがして,その下にある角膜実質にレーザーを照射し,再び角膜上皮を戻して癒着させる。術後の痛みも少なく,視力回復も早い。最強度近視にも対応できる。 これらの方法は健康保険の適用外で,RK以外は日本では症例数も少ない。手術が成功すれば眼鏡コンタクトレンズのわずらわしさから解放されるが,後遺症をともなうこともある。手術後の数日〜数ヵ月は,視界がぼんやりする,ぶれて見える,光過敏,夜間の運転困難,といった症状がでるケースもある。 後遺症をめぐる医療裁判も起きている。大阪・京都など2府6県の会社員・主婦ら47人は,RK手術の専門病院を経営する美容品販売会社を相手に,〈RKの手術ミスで極度の遠視になった〉として損害賠償を求めていた。1998年9月,大阪地裁は総額約4億7000万円の支払いを命じる判決を下した。

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