観客席(読み)かんきゃくせき(英語表記)auditorium

翻訳|auditorium

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「観客席」の意味・わかりやすい解説

観客席
かんきゃくせき
auditorium

古代ギリシアでは丘陵を利用して野外劇場を設計し,中央の舞台を見おろして三方へ扇状に延びる観客席 (テアトロン) を丘の斜面に設けた。古代演劇の伝統が一度とだえて,新たに教会のなかから発生した中世演劇は,聖堂内部や街頭で演じられ,見物人はそれを取囲んで立見をした。したがって,社会的地位の高い見物客には椅子の便宜が与えられることはあっても,明確な観客席は中世には存在しない。ルネサンス期になると,ヨーロッパでは劇場が建ちはじめたが,16世紀のイギリスは,宿屋中庭を利用して興行した巡業劇団の上演形式の名残りをみせて,張出し舞台を取囲む平土間と,それを取巻く円形多角形の建物に設けた桟敷席を観客席とする,他のヨーロッパ諸国にはない独自の劇場形式を生んだ。 17世紀以後,ヨーロッパの劇場は現在の形に近くなり,額縁舞台が現れ,観客席も平土間と2階,3階の桟敷席をもつようになった。オペラ劇場などではさらに5階にまで達し,その結果,声の通りが悪く舞台も見にくくなり,舞台と観客席との間の親近感も自然に薄れてきた。そこで,この交流を確保するために,20世紀になって張出し舞台,円形舞台,半円形舞台が再評価されはじめた (→アリーナ・ステージ ) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の観客席の言及

【劇場】より

…演劇あるいはこれに類する技芸を上演する建物で,大きく分けて演ずる場である舞台と,それを享受する観客席から成る。演劇の場としての劇場の空間構成には,屋外,室内の別を問わず,大別して二つの形態が認められる。…

※「観客席」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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