精選版 日本国語大辞典 「交流」の意味・読み・例文・類語
こう‐りゅう カウリウ【交流】
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ACと略記。短い時間間隔で方向が変化する電流,または電圧。ふつうは周期的な波形をもち,平均値が0のものをいう。
波形が正弦波のものを正弦波交流,そうでないものを非正弦波交流という。後者は波形により,方形波,三角波,台形波,階段波,パルス波などと呼ばれるほか,正弦波に近い非正弦波をひずみ波という。周期の逆数を周波数といい,単位はヘルツ(記号Hz)である。一般の電力は50Hz(東日本,世界の大部分),または60Hz(西日本,アメリカなど)の周波数をもち,これを商用周波数industrial frequencyという。電力の分野では,商用周波数より低いものを低周波,高いものを高周波というが,無線通信の分野では異なる。相数による分類では,電力網の大部分で使われる三相交流,家庭用,交流電気鉄道などが用いる単相交流のほか,特殊なものに二相,六相交流などがある。
交流は直流と比較して次のような特徴をもつ。(1)変圧器を用いて簡単に電圧を変えることができる。(2)電気化学的作用が少ないので導線の腐食が起こりにくい。(3)電流が自然に0になる点が1周期に2回あるため,回路の遮断が容易である。(4)リアクタンスの働きにより,送電可能距離が限られ,電圧降下も大きく,送電損失も大きくなる。(5)同じ実効値に対し,波高値が高いので,大きな絶縁耐力や瞬時電流容量が必要となる。(6)電気化学作用を用いる電気分解,電気メッキ,電池などや電子回路,直流モーターなど直流を用いなければならないものに対しては,整流器などの変換装置を必要とする。とくに(1)(2)(3)などの理由から,現在では電力の発生から,各需要家への配電まではすべて交流が用いられ,需要家は必要に応じて直流に変換して用いるのが一般的である。例外としては,非常に長距離の送電線,本州~北海道間のような異なる交流系統を海底ケーブルで連係する場合や,直流式電気鉄道などで直流の大規模な回路が用いられる。
一定周波数の正弦波交流に対する定常状態の計算は,直流回路の場合と類似の取扱いができる。時間tに対しという形に表現できる正弦波の電圧または電流は,その大きさを実効値Xで表現するのがふつうである。ωは角周波数と呼ばれるもので,周波数の2π倍である。θは位相角で,時間tの原点のとり方によって変わる。電球のような抵抗負荷(抵抗値R(Ω))を実効値V(V)の交流電源に接続すれば,実効値I(A)の電流が流れ,V/I=Rの関係が成り立つ。平均電力はVI(W)で,直流の場合と同じ明るさを示す。電圧,電流とも波高値は実効値の\(\sqrt{2}\)倍で,電圧の変化と電流の変化とは同じなので,両者の積である電力の最大値は2倍である。しかしどちらも0のときは電力も0で,平均電力は1倍となる。実効値とは,このように直流と平均電力が等しくなるように対応させた呼名である。インダクタンスやキャパシタンスを含む回路では,抵抗の概念を拡張したインピーダンスZを用いると,やはりV/I=Zの関係が成り立つ。しかし,この場合,電圧と電流とは位相が等しいとは限らない(時間的にずれた波形になる)ので,V,I,Zは大きさと位相角とを表す複素数となる。角周波数ωの交流に対するインダクタンスL(H)のインピーダンスは,jを虚数単位(j2=-1)とすればjωL(Ω),キャパシタンスC(F)のインピーダンスは1/(jωC)(Ω)である。直列接続,並列接続などに対するインピーダンスの合成法は,直流の抵抗の合成法と同じである。電力は,実数部Pが平均電力(単位はW)を,虚数部Qが無効電力(単位はbar)を表す。は皮相電力と呼ばれ,見かけの電力(単位はVA)を表す。
三相交流とは図2-aのように,電源と負荷とが3本の導線で結ばれ,電圧や電流が図3に示すように,120°(1/3周期)ずつずれて対称な形の正弦波交流である。図2-aの一部をとり出したbの単相交流と比較すると,aはbと同等のものが3組時間的に1/3周期ずれて重なったものとなる。bではiaの戻りの導線が必要であるが,aではia+ib+icはつねに0だから不要となり,bの3/2倍の導線で3倍の電力が伝えられる。bの電力は図3に示すように脈動するが,aではずらして重ねることにより平滑となる。電力が脈動なく伝えられるということは,発電にも送電にも,電動機などの負荷にも望ましいことで,電線数の節約とあわせて,三相回路が一般的に用いられている理由である。vab,vbcなどは線間電圧と呼ばれ,単相負荷を接続する場合には三相の任意の2線間に接続すればよい。三相電圧の表現はこの線間電圧で呼ぶ約束になっており,図2-a,図3のva,vbなどは相電圧と呼ばれるものである。三相交流のもう一つの特徴は,回転磁界が容易に作れることで,これを用いて構造が簡単で特性の優れた誘導電動機が作られ,電動力応用の諸分野に多数用いられている。
執筆者:曾根 悟
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時間の経過とともに大きさと向きが周期的に変わる電流をいう。交番電流の略。ACと略される場合が多い。電圧の場合は交流電圧ac voltageという。電圧、電流の区別なく、交流ということもある。典型的な交流は
のような正弦波形をしており、これを正弦波交流という。正弦波以外の交流、たとえば に示すような波形のものをひずみ波交流という。 においてImを最大値とよぶ。ひずみ波交流の場合は、一般に正の最大値と負の最大値は等しくない。波形の異なる交流は最大値が等しくとも作用は等しくないため、交流の量は電圧、電流とも実効値で表す。同じ抵抗に実効値1アンペアの交流を流した場合と、1アンペアの直流を流した場合とは、抵抗から発生する熱量は等しい。電力、エレクトロニクス、通信のような電気の応用分野では正弦波交流が多く使われている。これは、電気の発生、変換に正弦波交流が適しているためである。電力用の交流の周波数は50ヘルツまたは60ヘルツ(これらを商用周波数ともよぶことがある)が多い。エレクトロニクス、通信分野で使われる周波数は超低周波から超高周波にわたっている。電力用の交流の発生には主として発電機が用いられている。エレクトロニクス、通信分野では主としてトランジスタ、真空管などが用いられており、この場合は発電機ではなく発振器とよんでいる。コンピュータやデータ通信には、一定の幅をもった矩形波(くけいは)(方形波、パルス)とよばれるひずみ波交流が用いられる。これは、情報を誤り少なく処理するのに適しているためである。交流の波形はオシロスコープを用いて観察することができる。
電気回路に交流が流れている現象は微分方程式で表され、その計算は複雑であった。そこで、スタインメッツは代数方程式で交流の計算をする方法を考案した。この計算法は交流理論とよばれており、これによって交流回路の計算が著しく簡便になって電気技術の発展に寄与した。この手法は交流回路の計算に限らず、現在では他の分野でも広く活用されている。
[布施 正・吉澤昌純]
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… また電流の時間的な変化に関しては,つねに一つの方向に流れる電流を直流といい,その中で方向は変わらないが強さの変わるものを脈流,強さも一定の場合を定常電流という。それに対して時間とともに頻繁に向きを変える電流を交流といい,1秒間の向きの変化を周波数という。とくに周波数の大きい(ふつうは数百Hz以上)場合は高周波電流と呼ぶ。…
※「交流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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